バルサ幹部の間には「移籍容認を!」の声も…。ネイマール契約延長騒動の舞台裏

2016年07月26日 下村正幸

代理人の揺さぶりに嫌気が刺したバルサ首脳陣は…。

最終的にはバルサと2021年までの契約延長で合意したネイマール。とはいえ、代理人のやり方には小さくない批判が噴出した。(C)Getty Images

 2015-16シーズン終了時点で2018年夏まで残っていたネイマールとバルセロナの契約だが、リオネル・メッシの後釜を担う次期エースの契約延長交渉は、今年5月あたりからメディアを騒がせ続けてきた。
 
 クラブにとって、大物選手の契約延長交渉は一大オペレーション。おまけに事態を複雑にしていたのが、裁判問題だ。脱税疑惑の渦中に立たされる中、クラブが十分なサポート体制を確保できていないとネイマール・サイドが不満に感じたうえ、さらにそれと並行して、レアル・マドリーやパリ・サンジェルマンが超大型オファーを用意していることを代理人が仄めかし、交渉を優位に運ぼうと企てていたのだ。
 
 バルサ内では当初から契約延長で方針は固まっていた。さまざまな情報が錯綜する中、交渉は難航したが、話し合いを重ねた末、ついに年俸の倍増と2021年までの延長で合意。あとはサインするのみという段階になった。
 
 しかし、トップチームの予算がクラブ全体の55~70%の間で調整しなければならないというクラブ規約が足かせとなり、正式な契約調印は、年度が変わる7月まで待たねばならなかった。
 
 すると、ネイマール・サイドは税負担の見直しのため交渉再開を持ちかけたり、「契約解除金を支払う用意があるクラブが3つある」などと発言し、さらに強い揺さぶりをかけてきた。加えて当のネイマールが沈黙を守り続けたため、当初は契約延長を楽観視していた地元メディアやファンも騒ぎ始めたというわけだ。
 
 バルサ幹部の間では、こうしたネイマール・サイドの態度に嫌気が差し、「違約金の満額(1億9000万ユーロ+21%の付加価値税)が手に入るのであれば、移籍を容認すべきだ」との声が挙がりはじめる。
 
 またOBやジャーナリストなど識者の中にも、「ネイマールがバルサへの忠誠心より金を優先するなら、放出も止むなし」と意見する者が多数存在した。
 
 ただ、最終的には7月1日、バルサはネイマールと2021年6月30日までの契約延長で合意したことを発表。契約解除の違約金は初年度(16-17シーズン)が2億ユーロ(約280億円)、2年目が2億2200万ユーロ(約264億円)、そして3年目以降の3年間は2億5000万ユーロ(約300億円)に設定された。
 
 次期エースの流出として最悪の事態こそ避けられたものの、バルサとしては情報操作で事を有利に運ぼうとした代理人や家族に対する不信感が募ったのは事実。今後に向けて小さくない遺恨が残った。
 
文:下村正幸
 
※『ワールドサッカーダイジェスト』2016年7月21日号より加筆・修正
 
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