四中工の未来を明るく照らす1年生コンビ。「活気が戻った」と指揮官も目を細める。悔しい敗戦をバネに、より眩い光に【総体】

2025年07月27日 安藤隆人

後半の途中からピッチに立つ

全国の舞台で貴重な経験を積んだ与那覇(左)と大久保(右)。写真:安藤隆人

[総体2回戦]流通経済大柏 2-0 四日市中央工/7月27日/JヴィレッジP3

 これまで中西永輔、坪井慶介、浅野拓磨と3人のW杯戦士を輩出してきた三重県の名門・四日市中央工業。3大会ぶり31度目のインターハイは、2回戦でプレミアリーグEASTに所属する優勝候補筆頭の流通経済大柏に0-2で敗れて幕を閉じた。

 攻守において隙のない流通経済大柏に対し、四中工は伝統校の意地を見せた。持ち前のハードマークに加え、奪ってからの素早いカウンターを仕掛け、相手に自由を与えなかった。

 後半13分に1本のロングボールから、プレミアで得点ランキング首位を走るFW大藤颯太に決められたが、ここから落ちるどころかギアを上げて反撃に転じた。後半アディショナルタイム5分に大藤に再び縦を破られて追加点を浴びたが、四中工が見せたサッカーは間違いなく全国レベルだった。

 その内容の濃い戦いを輝かせたのは、2人の1年生だった。0-1で迎えた後半22分に投入されたMF与那覇哲と、その3分後に途中出場したFW大久保智紀は、それぞれ左サイドハーフ、FWのポジションで存在感を放った。

 スピード溢れるドリブル突破が武器の与那覇は、「自分のスピードがどこまで通用するのかを試したくて、ワクワクしていました」と口にしたように、ボールを持つとアグレッシブにドリブル突破を仕掛け、敵陣深くまでボールを運んでいくシーンを何度か作った。

 178センチでまだ成長の途中にある大久保は、流通経済大柏の屈強なCBコンビに対して空中戦で果敢に挑み、時には身体を真っ向からぶつけてボールを収めようとするなど、与那覇と共に積極的な姿勢を見せた。
 
 この2人のチャレンジがチーム全体のベクトルを前に向かせた。「2人にとって本当に難しい流れのなかでの投入だったと思うのですが、持ち味を出してくれたことで、チームに活気が戻った」と伊室陽介監督が目を細めたのも当然だった。

「スピードではやり合えましたが、アジリティ、フィジカルの部分で大きな差を感じました」(与那覇)

「正直、何もできなかった印象です。フォワードとして少ない時間でもボールを収めたり、シュートまで持ち込んだりしないといけないのに、できなかった。流通経済大柏はフィジカル、強度が全然違って衝撃的でした」(大久保)

 試合後は反省の弁を口にしたが、2人が積んだ経験は四中工にとって大きな意義を持つものとなった。
 

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