「PKを止められる、と流れましたけど…」小久保玲央ブライアンが“GK王国ベルギー”で見据える進化のカタチ。「昨季はメンタルを鍛え上げられた」【現地取材】

2025年07月09日 中田徹

「PKは自分のなかで三択があって、そこでの運もなかった」

新シーズンに向けての決意を明かした小久保。STVV躍進の鍵を握る正守護神だ。写真:中田徹

 シント・トロイデン(STVV)のファン感謝デーが7月5日に開催された。このイベントの目玉はサイン会。すべての選手、およびテクニカルスタッフが2時間もかけてサインや写真撮影に快く応じ続けた。
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 ファン感謝デーを終えると、GK小久保玲央ブライアンは「なかなかこっちの人たちと交流できなかったので、今回はこういう機会ができて良かったです。疲れましたけれど(笑)、2時間に渡っていろんな人たちの笑顔を見ることができて、すごい楽しかったです」と満面の笑顔だった。

 シント・トロイデンの街そのものが小さく、ファンの母数は決して大きくないが、だからこそクラブへの思いは熱く、チームとの距離感も近いのかもしれない。ゴール裏のウルトラスの声援を背中越しに直に受ける小久保は、「ファンが温かくて、自分たちが負けてもサポーターが鼓舞してくれるので、次のゲームにポジティブに臨めます」と感謝する。特に昨季、STVVが1部残留の危機を迎えた時期、アウエーの会場に訪れるサポーターの熱量は感動的ですらあった。

「本気で自分たちと一緒にサッカーを戦いたいんだな――というのが伝わってきます」

 小久保は1年前、ポルトガルの名門ベンフィカから、STVVに加入した。パリ五輪を終えてからチームに合流したこともあり、ベルギーリーグデビューは第4節のデンダ―戦(8月17日。3-3)だった。カップ戦はライバルのジョー・コッペンスに譲ったが、リーグ戦はレギュラーシーズン、プレーオフ合わせて33試合に出場。その前のシーズンではベンフィカBの一員としてポルトガル2部リーグで16試合、ゴールを守った小久保にとって、STVVでの1年は濃密なものになった。

 それでも失点はリーグワースト2位タイの54とスタッツは悪かった。以上のことを踏まえ、小久保は昨シーズンをこう振り返る。

「昨季はプロとして初めてしっかり試合に出続けましたが、意外と失点数が多くなってしまいました。しかし、自分が改善しないといけなかったシーンは、そんなに多くはなかったと思ってもいいのかなと思います。相手がいいシュートを打ったり、止められないシュートだったり。そのなかで『次に、次に。ポジティブにいかなきゃ』『これは自分のミスじゃない。大丈夫。次に止めればいいんだ』というポジティブさが昨シーズン、身につきました。

 データで見たら確かに失点は多かったんですが、自分にとって30何試合も出場するのは初めてのことでしたし、『残留しなきゃ』という感情があったので、落ち込んでいる時間なんてなかった。メンタルが鍛え上げられたシーズンでした」

 つまり技術面で自信を付けたということだろうか。

「キックはまだ"あれ(=課題が残る)"なんですけれど、セービングは『これ、止めることができたな』『これは、こうしたら良かったのに』というのが何本かあったくらいで、それ以外は相手のシュートが上手かったり、自分たちが崩されてしまったので、僕個人としては『しょうがねえな』というシーンが多かったと思います。『ツイてなかった』という言葉はあまり言いたくないんですが、相手や味方に当たって入ったとか、ちょっとアンラッキーなシーンも多かったですし。あとPKも12本と多すぎました。"代表"で『小久保はPKを止められる』というのが流れましたけれど――」
 
 それはU-23日本代表、日本五輪代表でのこと。昨年5月、U-23アジアカップ決勝でウズベキスタンと当たった日本は1-0でリードした後半アディショナルタイムにPKを与えてしまう。そこで小久保は右に飛び、左手を目いっぱいに伸ばして相手のPKを弾き出し、日本の優勝に大きく貢献した。『国防・小久保』誕生の日だ。

 さらに夏のパリ五輪、マリ戦で同じく1-0で迎えた後半アディショナルタイムに与えたPKを読みよく小久保が右へ飛び、相手のミスショットを誘った。仮にPKが枠内に来ても、小久保がかならず掻き出したはずと、観る者が確信するほどの好反応だった。当時のことを思い起こすと、ベルギーでのPKストップが1本だったのはちょっと物足りない。

「PKは自分のなかで右・左・真ん中という三択があって、そこでの運もなかった。事前にデータ分析をしてたんですけれど、逆を突かれたり、良いところに蹴られたりした。(失点数が嵩んだ一因は)PKが多かったという感じです」

次ページ来季に向けては「自分のプレーを魅せることに専念したい」

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