主力大量流出のドルトムント、今夏の刷新に対する現地の反応は?

2016年07月20日 マルクス・バーク

ドイツでは移籍市場でも無理に引き止めないのが基本スタンス。

既存の主力選手と、デンベレ(左端)のような若き新加入選手がどれだけ融合できるか。 (C) Getty Images

 ドルトムントでは、近年稀にみる大刷新が進行中だ。すでにフンメルスとギュンドアンが去り、ヴァツケCEOが「非売品」と明言していたムヒタリアンも結局、マンチェスター・Uへの売却を余儀なくされた。
 
 その一方で、ロデやバルトラら6人の新戦力が加入。そのうちの4人が24歳以下で、エムレ・モルやデンベレに至ってはまだ10代だ。
 
 24・7歳という昨シーズンのスタメンの平均年齢からも分かるように、ドルトムントは世代交代の必要に迫られていたわけではない。主力の流出が避けられない状況となり、半ば強制的に刷新に踏み切らざるを得なかった。
 
 ファンやメディアの反応は様々。慰留に失敗した首脳陣を批判する向きもあれば、複数のメガクラブが争奪戦を繰り広げたデンベレや「トルコのメッシ」の異名をとるエムレ・モルの獲得を評価する向きもある。
 
 私を含め、ドルトムントに拠点を置く記者の多くは、今夏の刷新を概ね好意的に受け止めている。ドイツには「旅人を止めるべきではない」という諺があるように、移籍市場においても「無理に引き止めない」というのが基本のスタンスである。
 
 即戦力ではなく、若手に目を向ける強化戦略には異論はない。
 
 2年前に1850万ユーロ(約25億円)で手に入れたインモービレが大きく期待を裏切る一方で、昨夏に1860ミュンヘンからたった250万ユーロ(約3億円)で引き抜いたヴァイグルが大ブレイクした事実を振り返っても、どちらを選ぶべきかは明白だろう。
 
 もちろん、首を傾げたくなる動きもある。そのひとつがロデの獲得だ。バイエルンに在籍した2年間でバックアッパーに甘んじた働き蜂に、果たして1400万ユーロ(約19億円)を投じる価値はあったのか。
 
 むしろ、多少の出費を覚悟してでも手に入れるべきは、マンチェスター・Cに手放したギュンドアンに代わるゲームメーカーだ。オリベル、コバチッチ、A・ゴメスというタレントに資金を集中投下するのが賢明だったのではないか。
 
 物議を醸したのが、大衆紙『ビルト』に語ったツォルクSDのコメントだ。
 
「我々は変革の真っ只中にある。打倒バイエルンを求める声には賛同しかねるね。今は若手に経験を積ませるのが大事な時期なんだ」
 
 と、まるで優勝を諦めたかのような〝白旗宣言〞はファンの失望を買った。
 
 現在、ゲッツェのバイエルンからの帰還が秒読み段階といわれ、さらにヴォルフスブルクからシュールレの獲得も噂されている。
 
 これについては、特に前者がかつての退団の経緯から「裏切り者」の烙印を押されており、しかもバイエルンでは十分に活躍できなかったということで、獲得に反対する声は今でも非常に多い。
 
文:マルクス・バーク
翻訳:円賀 貴子
 
マルクス・バーク/地元のドルトムントに太いパイプを持つフリージャーナリストで、ドイツ第一公共放送・ウェブ版のドイツ代表番としても活躍中。国外のリーグも幅広くカバーし、複数のメジャー媒体に寄稿する。1962年7月8日生まれ。
 
※『ワールドサッカーダイジェスト』2016年7月21日号の記事を加筆・修正
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