浅野拓磨に宿る紫の誇り――。ラストゲームの悔しさは世界で晴らせ!

2016年07月18日 小田智史(サッカーダイジェスト)

「どこか“僕らしい”というか、サッカーの神様がもっともっと頑張れと言ってくれている気がする」

広島でのラストゲームは、相手の厳しいマークの前に沈黙。57分にカウンターで横浜ゴールに迫るも、シュートはGK正面とチャンスを逃した。 写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

[J1・第2ステージ4節] 広島2−2横浜 7月17日/Eスタ
 
 クラブ所属歴4年、通算58試合・12得点――。浅野拓磨が残した数字は、24年に渡るサンフレッチェ広島の歴史において、決して突出したものではない。しかし――。移籍する選手に対する壮行セレモニーはクラブ史上初。そして、エディオンスタジアム広島に響き渡ったチャントや声援は、この若者がファン・サポーターにどれだけ愛され、大きな存在だったかを如実に物語っていた。

【浅野拓磨 国内ラストマッチPHOTOギャラリー】

 広島でのラストゲームは、中澤佑二とファビオの強力CBを中心とした横浜の堅守に撥ね返され、思うようにゴールにアタックできず。柏好文からパスを受けてギアを上げ、ペナルティエリアに侵入して左足を一閃した57分の場面も、シュートは力なくGK正面に飛んでしまった。逆転勝利に一縷の望みをつないだラストプレーも、トラップミスで無念のタイムアップ。ゴール&勝利で晴れ晴れとアーセナルに旅立つという「ハッピーエンド」は訪れなかった。
 
「決して良い終わり方だったとは思いませんし、悔しいまま広島を去らないといけない。でも、どこか"僕らしい"というか、サッカーの神様がもっともっと頑張れと言ってくれている気がします」
 
 これまで自分を支えてくれたファン・サポーターに少しでも恩返しがしたい――。彼らを笑顔にすべく勝利を追い求めただけに、浅野は引き分けという結果に悔しさを隠さなかった。しかし、旅立ちの日に直面した試練は、決意を固くするきっかけになったようだ。
 
「自分が苦しい時、悔しい時、嬉しい時、楽しい時、いつでもそばにいてくれたのが広島のファン・サポーターの方々。特に自分が苦しいなと思っている時にこそ、奮い立たせる言葉をかけてくれた。皆さんに恩返しをしないといけないと思っていましたけど、なかなかプレーで表わすことができず、サッカーは簡単じゃないと改めて感じました。だからこそ、何か強い気持ちが自分の中で生まれたというか、頑張らないといけないなと」

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