同国対決で敗れ16強敗退。それでもボタフォゴが見せた戦いぶりは、サポーターを失望させるものではなかったはずだ【クラブW杯戦記】

2025年06月29日 浅田真樹

延長前半の100分に失点

ボタフォゴのサポーターを勇気づけたマスコットのビラ。写真:浅田真樹

 思えば、試合前にして早くも優勢だったのは、パルメイラスである。

 クラブ・ワールドカップのラウンド16。くしくもブラジル対決となった、パルメイラス対ボタフォゴの一戦を前に、パルメイラスはサポーターの数で相手を圧倒していた。スタジアム周辺のあちこちで緑の集団は意気上がる一方、白と黒のそれは、どこか肩身が狭そうだった。

 結果的に試合は、キックオフ前の雰囲気そのままに、パルメイラスが勝利。互いにスコアレスで突入した延長前半の100分、パウリーニョが値千金の決勝ゴールを決め、激闘を制した。

「ボタフォゴは、パリ・サンジェルマンのルイス・エンリケ監督も『最も守備が良いチームだ』と言っていたが、今日は本当に簡単な試合ではなかった」

 パルメイラスのCBブルーノ・フクスはそう語り、苦しかった試合を振り返りつつも、話題が途中出場のヒーローへと移ると、嬉しそうに口を開いた。

「彼(パウリーニョ)は素晴らしい選手であり、チームのエース。彼とプレーし続けられることをとても嬉しく思う。僕は2シーズン前、アトレティコ(・ミネイロ)でともにプレーし、代表(東京五輪の優勝チーム)でもともにプレーした。だから、彼のポテンシャルは十分に理解している。彼がピッチに立ち、チームを助けてくれたことに感謝し、この勝利を喜びたい」

 序盤からロングボールを効果的に使い、セカンドボールを拾っての攻撃につなげたパルメイラスが、押し気味に試合を進めていた。

 対してボタフォゴは、グループステージで威力を発揮したカウンター攻撃を思うように繰り出せずにいた。そんな試合展開を考えれば、パルメイラスの勝利は妥当な結果と言ってもいいのだろう。
【画像】バッジョ、ベッカム、ロナウドらが来場!アメリカで開催中のCWCに集結したレジェンドを紹介!
 しかしながら、今大会を通してのボタフォゴの健闘は称えられていい。

 グループステージではパリSG、アトレティコ・マドリーと同組になったことで、「多くの人が我々の敗退を予想していた」とボタフォゴのMFアラン。しかし、アランが「今大会から学んだのは、決してあきらめないことだった」と振り返ったように、ヨーロッパ王者のパリSGからしたたかに勝点3を奪い、厳しいグループを突破してみせた。

 試合前、数の上では劣勢を強いられていたボタフォゴサポーター。だが、スタジアム脇の一角に集まっていた彼らのもとに、クラブのマスコット、犬の「ビラ(Bira)」がやってくると、たちまち勇気づけられたように盛り上がり、パルメイラスサポーターと肩を並べて入場ゲートへと向かっていく様子が見られた。

「我々は謙虚にここまで来た。相手がパルメイラスであれ、インテル・マイアミであれ、どこであろうと、我々は勝ちたいと思っていた」

 そう語るアランは、アメリカまで駆けつけてくれたサポーターたちに感謝の気持ちを込めて、続けた。

「今日はそれができなかったが、我々のファンもここで成し遂げたことを誇りに思っていると思う」

 最後は同国対決に敗れ、悔しい思いをしたとはいえ、ボタフォゴが今大会で見せた戦いぶりは、決してサポーターを失望させるものではなかったはずである。

取材・文●浅田真樹(スポーツライター)

【記事】「クラブW杯は史上最悪のアイデア」名将クロップが抱く深刻な懸念。選手たちはいつ休む?「昨年はコパとEURO、来年はW杯だ」

【記事】「日本はもうボスじゃない!」「重くのしかかっていた呪いを解いた」浦和を4発粉砕でメキシコメディアが大歓喜【クラブW杯】

【画像】ワールドクラスの華やかさ!CWCを優美に彩る各国の熱烈サポーターを特集!
 
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事