浦和が見せつけられた世界との“果てしない差”。「うまさ」を超えた、粘り強さや駆け引きの老獪さに感じた違い【小宮良之の日本サッカー兵法書】

2025年06月24日 小宮良之

手も足も出なかった、わけではない

リーベル、インテルに連敗が決定した浦和。(C)Getty Images

 クラブワールドカップ、アジア王者の浦和レッズは開幕戦で、アルゼンチンの強豪、リーベル・プレートと対戦して1-3と敗れている。

「善戦」

 それが正しい表現だろうか。自分たちのペースで戦っている時間もあったし、ゴールに迫ったシーンも何度かあった。決して、手も足も出なかった、わけではない。

 もっとも、同時に果てしない差を見せつけられた。何度やろうが、分は悪い。それだけの隔たりだ。

 たとえば、シュートまでいけそうなパスをもらいながら、打ち切れない。何気ないバックパスを奪われる。それらは、厳しい戦いに慣れていないことの証左だった。

 先制点、リーベルは右から左へボールを自由に運んでいる。さらに左でフリーになった選手に展開。クロスを打ち込み、フリーで入った選手がヘディングで決めた。

 この間、浦和は相手選手を簡単に横切らせている。サイドチェンジに対し、まったくスライドが間に合わず、左サイドの選手に寄せきれていない。挙句に、エリア内に人はいたが、ゾーンディフェンスを言い訳に、シューターを完全にフリーにしていた。

 そして2点目、リーベルのワントップに入っていたセバスティアン・ドリウッシは浦和のDFのバックパスを見逃さずに反応し、GKにパンチで顔を殴られながら頭でボールを突き、ゴールを決めている。空中で殴られたことで体が反転し、着地で足を痛めて後退を余儀なくされた。しかし、ゴールという場面での執念は見事だった。

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 単なる「うまさ」を超えた、粘り強さや駆け引きの老獪さで、リーベルは違いを見せたのである。

 浦和陣営は、高い強度での試合経験が少なすぎたのだろう。松尾佑介のPKで1点返した後、コーナーキックからニアに飛ばされたボール、飛び込んだ選手をまったく無警戒だった。またしても、エリア内でシューターをフリーにする失態で、とどめを刺された。

「エリア内にゾーンはない」

 それがスペインや南米で言われる定石である。もちろん、ゾーンを作って守るのだが、自分のゾーンに入ってきた選手は完全につかまなければならない。さもなければ、失点は必定だからだ。

 ひとり一人の選手の"個の力"も、単純にリーベルは上回っていた。たとえばドリウッシが浦和の選手4人に囲まれながら、反転から際どい左足シュートを打つシーンがあった。ゴールに対し、多少強引なアプローチができるか。結局、これは決まらなかったが、浦和の体力や気持ちを削っていた。ジャブのように効いて、決勝点の消極的バックパスにもつながっていたはずで…。

 リーベルが「世界」を見せつけた試合だった。

文●小宮良之

【著者プロフィール】こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。

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