胸ぐらを掴んでケンカ。でもすぐ仲直り。木村と立田が発した“熱”。マリノスを1-0撃破。自信と絆を深めた大きな勝利【岡山】

2025年06月22日 寺田弘幸

同じ熱量で戦い抜いた仲間がいるから

決勝弾のルカオ。17分にCKからヘディングシュートを決めた。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[J1第21節]横浜FM 0-1 岡山/6月21日/日産スタジアム

 難局を乗り切って日産スタジアムで勝利を手にした岡山の選手たちは、晴れ晴れとした表情でミックスゾーンに現われた。

 7試合ぶりにフル出場して、チームの誰よりも多く走った木村太哉は誇らしそうに言う。

「これぞファジアーノ岡山だっていう感じがします。J1でも『らしさ』をみんなで表現できていると思いますし、それができて『ようやく勝てるんだな』とも思わされる試合になりました」

 岡山は前半の立ち上がりから勇敢に前へ出た。ハイプレスをかけて試合の主導権を握り、セットプレーからゴールを奪い取る。大きな身体を活かして相手に圧力をかけたルカオや、左サイドに回ってキレのあるアタックを見せた佐藤龍之介が目立つ活躍を見せたなか、木村は黒子となって走力と熱量でチームの攻守をリードし続けた。

 後半は横浜FMのギアも上がって苦しい展開を強いられたなか、木村は走力と熱量を保ち続けて戦った。「もう本当に死ぬかと思いましたよ」。すべてを出し切って沸き起こってきた充足感は、同じ熱量で戦い抜いた仲間がいるから、より大きなものだった。

「後半は(立田)悠悟とケンカしながらやってました(笑)。途中で、守備のやり方でお互いの意見が食い違って胸ぐらを掴んでしまいましたけど、その後にすぐ仲良くできる。それがお互いに分かっているし、お互いに高め合ってやれているかなと。周りの人にはちょっと申し訳なかったですけど」
 
 この日、27歳の誕生日を迎えた立田は、過去に退場を経験した苦い思い出のあるスタジアムで勝てたことに安堵していた。

「今年のJ1の予定表を見た時、自分の誕生日にここで試合をやるって分かった瞬間から怖かった。かなり、いろんな感情が入り混じりましたし、怖さしかなかったですけど、みんなの頑張りのおかげで良い日になって良かったなと思います」

 特に前線の選手の奮闘を称えていた。

「今日に関しては前の選手の頑張りが凄かったと思うんで、僕たちはもうゴールを守るだけっていう感覚だった。前の選手の頑張りには感謝していますし、称えてあげたいと思います」

 木村とのやり取りにも、立田は笑って応じる。

「プレスに行く、行かないのところで言い合いをしましたけど、ちゃんとやることをやっているから、お互いにそういう言動、行動が出るんだと思う。自分たちが後ろと前でそれをやれたのは良かったなと思います。あれで周りも締まったと思うんで。なだめてくれた人たちには、『すいません』と『ありがとう』を伝えたいです」

 2人は少し熱くなり過ぎていたかもしれないが、その熱がなければ後半の横浜FMには立ち向かえなかったはずだ。

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