足が痛い、じゃあどうする。プロ注目の前橋育英ボランチ柴野快仁の図抜けた思考力。インハイ予選突破の立役者に

2025年06月17日 安藤隆人

準決勝では冷静にPKで同点弾

インハイ出場を決めた前橋育英。柴野は「チャレンジャー精神で、みんな覚悟ができていたので勝ちきれた」と振り返る。写真:安藤隆人

 インターハイ群馬県予選を制したのは、昨年度の選手権王者の前橋育英だった。

 全国制覇に貢献した多くの2年生が最高学年を迎え、戦力は昨年以上という声もあり、順当に出場権を手にしたように見えるが、その内情は苦戦の連続だった。その中で思考力をフルに駆使して予選突破の立役者となったのが、ボランチの柴野快仁だった。

 選手権決勝で値千金の同点ゴールを決めるなど、ボランチとして存在感を放った柴野は、今季が始まってからもずっと「昨年と今年は別。今年のチームはまだ王者じゃないし、受け身に回ったり、自分たちが上だと思ったりしたら、どこにでも負ける危険性がある」と、常に危機感を持って自分を律していた。

 準決勝の前橋商戦、前半にセットプレーから失点すると、巻き返せないまま時間が経過し、後半アディショナルタイムに突入した。

「アディショナルタイム3分の表示があって、『まだ3分ある』と。センターバックの(久保)遥夢が前線に上がってきて、パワープレーに転じたのですが、試合を通じて遥夢のヘッドがしっかり当たっていない印象を受けたので、セカンドに反応できるようになるべく彼の近くにいようと思いました」

 追い詰められた局面でも柴野の頭の中はクリアだった。久保の近くでこぼれ球を狙い続けた結果、アディショナルタイムが3分を経過しようとしていた時、久保のヘッドから自分のもとにボールがこぼれてきた。

「キーパーが飛び出してくるのが見えて、最初はダイレクトでシュートを打ちたかったのですが、打てる体勢ではなかったのでワントラップしてかわそうとした」瞬間、GKの手がかかり、彼はペナルティエリア内で転倒した。
 
 ゾーンに入っていた柴野の的確な状況判断と正確なプレーがPK獲得に繋がった。外せば負けがほぼ確定するような重要なPK。彼は臆することなくボールを抱えてペナルティスポットに置き、冷静にゴールに突き刺した。PK戦でも決めれば勝利の5人目に登場。落ち着いて成功させ、チームを決勝に導いた。

「いずれも重要なPKでしたが、選手権決勝のPK戦を経験しているので、自信を持って蹴ることができました」

 しかし、前橋商戦で左足を打撲。翌日の桐生第一との決勝は痛みをこらえながらの出場となってしまったが、試合前から勝利のために思考を巡らせていた。

「このコンディションで自分がチームのためにやれることは何か。足が痛い状態でフルパワーのスプリントが難しいとなると、自分が不用意に上がってしまって戻りが遅くなってしまうとチームに迷惑がかかる。それであれば(ボランチでコンビを組む竹ノ谷優駕)スベディをどんどん前に行かせて、僕はセカンドボールの回収やつなぎ役を担って縦関係でやった方がいいと思ったし、動きが限定される分、声で鼓舞することを意識しました」

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