鹿島は憧れのクラブ。加入の決め手は他にもある。スカウトの言葉に林晴己の心は揺さぶられた。明治大でも強烈に感じる「常勝軍団のエンブレムの重さ」

2025年06月14日 安藤隆人

無敗記録がストップ。長時間の緊急ミーティング

大学サッカー界で屈指のアタッカーとして名を馳せる林。写真:安藤隆人

 関東大学サッカーリーグ1部・第11節。明治大はライバルの筑波大に0-2で敗れ、2023年11月の関東1部・最終戦以来となる黒星を喫した。

 1年半の無敗記録を止められた試合後、4年生たちは西が丘の片隅で長時間に渡る緊急ミーティングを開いた。その話し合いが終わり、ミックスゾーンに姿を現わした林晴己に話を訊くと、神妙な面持ちでこう口を開いた。

「明治として、4年生として、責任を感じています。この負けは決して偶然ではなく、起こるべくして起こったからこそ、もう一度、自分たちを見つめ直そうと。もちろん池上寿之監督も『どこかで終わりは来る』と言ってくれていましたし、僕らのプレッシャーも試合ごとに重くなっていたのも事実。だからこそ、この負けを無駄にしないように、最後は明治が1位になるための負けにしたいと思いを共有しました」

 林は来季、鹿島アントラーズ入りが内定している大学屈指のサイドアタッカーだ。高川学園高時代は10番を背負い、切れ味鋭いドリブルで何度もサイドや中央を切り裂き、高校最後の選手権では世界的に話題になった『トルメンタ』のフィニッシャーとして躍動し、チームもベスト4に輝いた。

 大学進学の際に筑波大の練習に参加するも、声はかからず。熱心に誘ってくれた明治大で「筑波大を倒して優勝してプロになる」という決意を持って大学サッカーに挑んだ。
 
 1年時からそのドリブルは猛威を振るい、サイドアタッカーとしてメキメキと頭角を現すと、常勝軍団の中で欠かせない攻撃のファクトとなった。

 初速の速さ、トップスピード時のボールコントロールの安定感。スピードを止められてもテクニックで剥がせる力と、ゴール前に飛び込んでいける得点感覚。高いスキルを持ったサイドのスペシャリストをJ1のクラブが放っておくはずがなく、昨年の段階から水面下で激しい争奪戦が繰り広げられていた。

 複数のビッグクラブが正式オファーを出すなか、林が選択したのは鹿島だった。

「僕が最初に好きになったクラブがアントラーズでした。中学1年生の時にクラブ・ワールドカップでレアル・マドリードと戦った決勝戦を食い入るように見ていました。クリスティアーノ・ロナウド、モドリッチなど世界的なスーパースターがずらりと揃う相手に対して、柴崎岳選手や植田直通選手らが身体を張ったり、臆することなく堂々とプレーする姿を見て、『凄いチームだ』と憧れるようになりました」

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