代表戦で涙した浅野はもういない。リオ五輪メンバーGK中村との1対1を失敗しても……

2016年07月14日 多田哲平(サッカーダイジェスト)

この日も決定機を外してしまったが、“あの日”の浅野とは違っていた。

キリンカップ決勝のボスニア・ヘルツェゴビナ戦の後半アディショナルタイムに、絶好のチャンスを得たにも関わらず気の弱さからパスを選択。試合後は悔しさのあまり涙を流した。それから約1か月…。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

[J1第2ステージ3節]柏3-3広島/7月13日/柏
 
 J1第2ステージ3節、柏との1戦において、もっとも注目を浴びたのはほかでもない。7月3日、広島からアーセナルへの移籍を発表した浅野拓磨だった。

【PHOTO】浅野拓磨~アーセナル移籍までの軌跡~2007-2016

 この21歳のFWがボールを持つたびに、紫色に染まったスタンドから、ひと際大きな声援が飛んだ。
 
 クラブで10番を背負う浅野は、リオ五輪メンバーであり、6月に行なわれたキリンカップではA代表に選出された。印象深いのは、キリンカップ決勝のボスニア・ヘルツェゴビナ戦での、"あのパス"シーン。弱気になり、シュートを打たなかったことを後悔し、その試合後、涙を流した姿は記憶に新しい。
 
 そんな浅野だったが、この日も決定機を外してしまう。それでも"あの日"の浅野とは違っていた。

 広島のユニホームを着てプレーするのは、残り2試合。本人も並々ならぬ想いで試合に臨んだはずだ。しかし、その想いとは裏腹に、この日浅野はノーゴール。
 
 最初のビッグチャンスは7分。2分前に先制された広島としては、早めに振り出しに戻して、相手を勢いに乗せるのを防ぎたいところだ。

 浅野は自慢のスピードで裏へ抜け出すと、GKと1対1を迎える。対するは同じくリオ五輪代表の中村航輔だった。前に飛び出してきた中村の位置を確認して、浅野はループシュートを選択。だが、そのシュートをクロスバーに当て、チャンスをフイにしてしまう。
 
 また、後半に入り2点のリードを追いつかれ、3-3で迎えた66分に再び決定機が訪れる。しかし、ペナルティエリア手前で左足を振り抜いたシュートも、またもやクロスバーに阻まれた。

 決定機を外した浅野は、2回の決定機逸をこう振り返る。

「自信を持ってシュートも打ちましたし、後悔はない。あとは入るか入らないか。そこのクオリティを上げていかないといけないなと思いますし、2本とも自信を持ってシュートを打ちましたし、1本目もループでバーで当たりましたけど、自分のなかで良い選択をしたと思ってシュートした。あとは力加減のところであったりとか、決めきる力をつけていくだけだなと思います」
 
 『自分の感覚では先手は取れていたか』との質問にも、「そうですね。でも入らないと意味がないので。ゴールになってない時点で、そこの勝負は自分が負けてると思いますし、どういう形であれ決めきらないといけない。駆け引きよりもネットを揺らせるか揺らせないかの勝負だと思うので、今日はそういった勝負では負けてしまった」と、悔しさを滲ませながらも、語気を強めてはっきり答えていた。その姿からは代表戦から短期間で成長を遂げた印象を受けた。

 失敗をして後悔するだけでなく、すぐに課題を見つけて実行に移せる。これが浅野を急成長させている要因のひとつなのだろう。失敗を繰り返しながらも、前に進む浅野は、海外挑戦でどんな進化をするのか。

次ページ残りの1試合は、「自分のなかにある力をすべて振り絞って、なにがなんでも勝って終わりたい」

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事