平河悠、鈴木唯人は存在感を示したが“底上げ”はまだまだ。オーストラリア戦で見えたパリ五輪世代の現在地

2025年06月06日 元川悦子

先発11人中、5人が2001年以降生まれのパリ五輪世代

攻守両面で力強さとアグレッシブさが際立っていた平河。(C)SOCCER DIGEST

[W杯最終予選]日本 0-1 オーストラリア/6月5日/パーススタジアム

 絶対的な主力級が、キャプテンマークを巻いた鎌田大地(クリスタル・パレス)1人というフレッシュな陣容で挑んだ敵地でのオーストラリア戦。森保一監督は1年後の本大会に向け、若い世代の底上げを目ざしたが、5バックで中央を固めるオーストラリアに序盤から苦戦。ボール支配率は68.7%と圧倒的に上回ったものの、チャンスらしいチャンスを作れず、最後の最後にミスが出て失点。0-1で敗れた。

「経験値の少ない選手たちが今日は多くプレーしましたが、練習の時からギラギラ感を出して、自分の良さを最大限に発揮しようと良い準備をしてくれた。最後は結果が出なくてすごく残念でした」と指揮官はコメント。平河悠(ブリストル・シティ)、関根大輝(S・ランス)、俵積田晃太(FC東京)という初キャップの3人を含む新戦力の積極果敢なトライ自体は前向きに受け止めている様子だ。

 改めて試合を振り返ってみると、この日は先発11人中、5人が2001年以降生まれのパリ五輪世代だった。途中出場した高井幸大(川崎)を含めると、昨年の五輪に参戦した選手は4人。鈴木唯人も活動には数多く参加していて、お互いの特徴を理解。感覚的にもすり合わせができていた。

 実際、右ウイングバックの平河、右シャドーの鈴木唯、ボランチの藤田譲瑠チマ(シント=トロイデン)、3バック右の関根の4人が近い距離感でチャンスを作るシーンが時間を追うごとに増えていった。

 最たる場面が61分の大橋祐紀(ブラックバーン)の決定機。関根から平河、藤田とボールがつながり、大橋に縦パスが入った瞬間、鈴木唯も中央に走り込んでフィニッシュに絡める状況を作っていた。「パリ世代のユニット起用」という意味では有効な部分もあった。
 
 個々に目を向けると、特に平河は攻守において力強さとアグレッシブさが際立っていた。「前から来られても、固められても、自分たちがやることは変わらないし、相手を見てポジションを取れていた。どんな展開であっても今日はシュート2本は打とうと決めて入った。結果的に入らなかったけど、2本を打てたのは最低限、ゴールへの意識は出せたのかなと思う」と本人も語る。その思い切りの良さは今後につながりそうだ。同じポジションの堂安律(フライブルク)、伊東純也(S・ランス)とは異なる持ち味を出せるオプションになれるかもしれない。

 平河と絡んで良い動きを見せた鈴木唯も、ドリブル突破やフィニッシュへの鋭さ、スペースを巧みに突く賢さなどでインパクトを残した。ハーフウェーライン手前から一気に持ち込んでシュートを放った28分のシーンなどは、彼らしい技術とセンスが詰まっていた。

 それを決め切れないのは課題だが、1年前の2次予選・ミャンマー戦で代表デビューした頃より格段に落ち着いていた。シャドーは一大激戦区で、この先も代表招集される確約はないものの、先々の可能性は感じさせたと言っていい。

【画像】日本代表のオーストラリア戦出場16選手&監督の採点・寸評を一挙紹介! 最高点は対人の強さを発揮したCB。代表デビュー組の評価は?

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