6年前に奪えなかったダメ押しの4点目を演出。CL決勝の舞台、本物の大人になったデンベレの姿があった

2025年06月02日 吉田治良

攻撃に転じれば、まさに神出鬼没

CL決勝の舞台でも躍動したデンベレ。(C)Getty Images

「大人」になるきっかけは人それぞれだろうが、パリ・サンジェルマンのウスマンヌ・デンベレにとってのそれは、30代まであと2年ほどに迫った2024-25シーズンに訪れたということだろう。

 ずいぶんと時間はかかったけれど、チャンピオンズリーグ(CL)決勝の舞台、ミュンヘンのアリアンツ・アレーナには、数年前とは別人のような、本物の大人になったデンベレの姿があった。

 17-18シーズンから6年間在籍したバルセロナ時代を知る者からすれば、「よくぞここまで」と改心した不良息子と久しぶりに再会したような気持ちにもなっただろう。

 深夜までテレビゲームに夢中になって寝坊をしては、当たり前のように練習やチームミーティングに遅刻し、ファストフードを食べ散らかしたままの自宅は手が付けられないほどのごみ溜め状態。歴代の監督やチームメイトは更生を促そうと幾度となく手を差し伸べたが、改心したかと思えば裏切られるの繰り返しだった。

 生活態度を改め、本気でサッカーと向き合えば、リオネル・メッシにも匹敵すると言われた途轍もない才能を垂れ流すように消費しながら、本人に悪びれた様子が一切ない。だからサポーターは、なおさら腹立たしかった。
 
 強く記憶に残るのは、18-19シーズンのCL準決勝だ。リバプールと対戦したバルサは第1レグに3-0で勝利したものの、アウェーの第2レグに0-4で敗れ、世紀の大逆転負けを喫するのだが、敗退後に何よりもメッシが悔やんだのは、第1レグに4-0とするチャンスがありながら、それをフイにしてしまったことだった。

 フイにしたのはデンベレだ。後半アディショナルタイムにカウンターからメッシがマーカー数人を引きつけてラストパスを送る。しかし、GKアリソンとの1対1の決定機をデンベレは弱々しいシュートでみすみす逃してしまう。珍しく感情をあらわにし、ピッチに突っ伏して悔しがったメッシを横目に、デンベレはシュートミスを反省する様子もなく、どこか涼しい顔をしていた。

 あれから6年。インテルとのCLファイナルのピッチには、キックオフ直後から鬼の形相でボールを追いかけるデンベレがいた。かつての気まぐれなウインガーは、ルイス・エンリケ監督による配置転換で、いつの間にか献身的な9番へと進化を遂げていた。2度追い、3度追いは当たり前。相手GKヤン・ゾマーに強烈なプレスを掛けてパスコースを制限し、インテルに自由なつなぎを許さない。

 攻撃に転じれば、まさに神出鬼没。前線中央に留まることなく、中盤に下りてゲームを組み立て、サイドに流れてチャンスメイクをするデンベレを、インテルのDFたちはなかなか捕まえきれない。

 パリSGに先制点が生まれるのは、デンベレが右からカットインしてシュートまで持ち込んだ直後の12分。その仕掛けによって、すっかり警戒心が削がれていた左サイドからフビチャ・クバラツヘリアが崩し、最後はデジレ・ドゥエが横に流したパスをアシェラフ・ハキミが決めている。

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