契約延長は叶わずも貫いたクラブ愛!バイエルンの“伝説”ミュラーは最後まで“彼らしい姿”で別れを告げた【現地発コラム】

2025年05月18日 中野吉之伴

通算750試合で247ゴール・176アシスト

新天地も注目されるミュラー。(C)Getty Images

 シーズン終盤を迎えると、ホームラストマッチで、今季限りで引退や退団する選手へのセレモニーが行われるのは通例だ。そのすべての別れに寂しさがある。その選手が長年クラブに貢献してきた功労者ならなおさらだ。まして育成からクラブ一筋にやってきた選手がいなくなるとなったら、その衝撃の大きさは計り知れない。

 トーマス・ミュラーがバイエルンから離れるのをイメージできる人がどれほどいるだろう。

「僕とFCバイエルンの関係は、僕がサッカーのことを考えられるようになったころから、がっつりなんだよ」

 あるインタビューでそう優しく笑ったミュラーの顔を思い出す。バイエルンあるところにミュラーがいて、ミュラーあるところにバイエルンはある。そしてその関係性は未来永劫に続くと誰もが思っていた。

 だが、今季限りで切れる契約は本人が望むように1年延長されることはなかった。クラブのレジェンドとして誰よりも大切な選手であることはすべての首脳陣が認めるものの、黒字経営を何より大事にするバイエルンにおいて、ミュラーの高年棒は悩みの種でもあった。ピッチでまだまだできるとはいえ、今季の出場は29試合も出場時間は1168分。35歳という年齢を考えると、来季以降の出場機会はさらに減っていくことが予想される。

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 様々な事情を考えると契約延長がされないことは理解できない話ではないかもしれない。でもファンからすれば、理解したい話でもないのだ。

 それでも、ミュラーはポジティブなメッセージをファンに送り続けた。自分とクラブの間には何もわだかまりはない、と。バイエルンの目標に向けて、共に最後まで戦おう、と。

 バイエルン公式戦通算750試合247ゴール・176アシスト。チャンピオンズリーグ(CL)優勝2回。ブンデスリーガ優勝13回。クラブワールドカップ優勝2回。ドイツカップ優勝6回。UEFAスーパーカップ優勝2回。DFBスーパーカップ優勝8回。

 残したのは、驚異的な記録だけではない。ファンの心深くに刻まれる数々の記憶をもたらしてくれた。

 今季のCLの準々決勝で激突したインテルとのファーストレグでは、1点を追う状況で途中出場し、チームとファンに希望をもたらす貴重な同点ゴールを決めた。スタジアムDJの熱の入れようも半端ない。普段はMaxで3回のコール&リスポンスも、5回行われたほどだった。

 チームが困っているとき助けてくれるのはいつもミュラーだった。ミュラーさえいれば何とかなると信じられる力を持っている選手だった。
 

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