3連敗含む6戦未勝利から2連勝。苦境を乗り越えたジュビロのさらなる成長の鍵。上原力也は「何度も言いますけど、積み重ねが大事」

2025年05月16日 河治良幸

1つ壁を越えれば、新たな壁にぶつかるという繰り返し

勝点24で7位。持ち直してきた磐田は上位にどこまで食い込んでいけるか。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

「新たなチャレンジがあるなかで、うまく行かない時間は間違いなくある。そのなかで、積み重ねていくことが本当に大事だと思うので。痛みを伴いながら、少しずつ積み上げていかないといけない」

 ジョン・ハッチンソン監督が率いるジュビロ磐田で、中盤の主力を担う上原力也がこう語ったのは、1月下旬から2月の頭にかけて行なわれた鹿児島キャンプの最中だった。

 昨シーズンの後半に横浜FMを率いた指揮官のもと、アグレッシブな"アタッキング・フットボール"にチャレンジしている磐田は、ビルドアップのベースを高めながら、全体を押し上げて、厚みのあるフィニッシュに繋げる戦いを続けている。

 徐々に成長は見られるが、対戦相手も勝点3を勝ち取るために磐田を分析し、対策を講じてくる。そうしたなかで1つ壁を越えれば、新たな壁にぶつかるという繰り返しに向き合いながら、常に相手の対策の上を行くチームになっていかないと、このスタイルで目標とするJ2優勝、J1昇格を勝ち取ることはできないだろう。

 成長に痛みを伴うことは、ハッチンソン監督も前もって指摘していたことだったが、第10節のアウェー秋田戦からホームの大分戦と山口戦で敗れ、3連敗を喫した時期は、1年でのJ1復帰を目ざすチームにとって、かなり苦しかった。

 リーグ戦に限れば8節・山形戦から13節・今治戦までの6試合で勝利がなく、首位を快走する千葉をはじめ、昇格のライバルとなる上位陣に引き離された。
 
 しかし、14節・札幌戦で7試合ぶりとなる勝利を飾ると、"蒼藤決戦"と呼ばれる藤枝戦では、後半アディショナルタイムに倍井謙がPKを獲得し、マテウス・ペイショットが決めて1-0で勝ち切った。

 そうした苦境を乗り越えられたのは、指揮官の信念と選手たちの"このサッカーで優勝、昇格を勝ち取る"という覚悟があったから。ハッチンソン監督は相手の対策に向き合うなかで、つなぐことを意識するあまり、薄れてしまっていたゴールに向かう、前からボールを奪いに行くというビジョンを選手たちに再提示した。

 ハッチンソン監督が掲げるアタッキング・フットボールの本質は、常にゴールを目ざすことであり、そのための手段としてポゼッション、自陣からのビルドアップが存在する。相手がハイプレスで邪魔してくれば、もちろん剥がしてラインの間を通す方法もあるが、よりシンプルなのはディフェンスの背後を狙い、相手を下げさせることだ。

 それでそのままゴールできれば一番だし、下がって対応してくれば、今度は手前で攻撃側が前を向けるので、相手を押し込むことができる。

 13節・今治戦は自分たちの隙から2点差を追い付かれる形で3-3に終わり、磐田からみると非常に悔しい引き分けとなったが、3連敗の時とは異なり、高い位置でボールを握りながら、アグレッシブにゴールを目ざす磐田の良さが全面に見られた試合だった。

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