浅野が盟友・野津田ら共に戦ってきた仲間へ発したメッセージ「託してくれるメンバーのために」

2016年07月02日 中野和也

「勝てないと言っていた人を見返すつもりで共に戦ってきた」

共に戦ってきた仲間に対しての熱い想いを述べた浅野。リオでの必勝を誓った。写真:中野香代(紫熊倶楽部)

 野津田岳人とは、ずっとライバルだ。それはおそらく、浅野拓磨がスパイクを脱ぐまで、その関係性は変わらない。
 
 2013年、ふたりは同時に広島入り。先に結果を出したのは野津田だった(5月19日の対甲府戦でJ初得点)のだが、この時の浅野は「正直ムカついたし、自分に対してめっちゃ悔しかった」。一方で2015年に浅野が爆発した時も、野津田は悔しさを隠さなかった。
 
 だが、そんなふたりが一緒にピッチに立つと、息のあったコンビネーションを見せる。互いに信頼し合い、得意なスタイルも理解し尽くしているふたりはベストパートナーだ。2014年2月22日、富士ゼロックススーパーカップで広島を優勝に導いた浅野のプロ初得点は、野津田岳人のスルーパスから生まれたものである。
 
 だが、リオ五輪代表での立場は、同じではない。浅野はメンバーに選出されたが野津田はバックアップ。過去、遠藤保仁もシドニー五輪で予備登録の立場になり、そこから彼は這い上がってきたのだが、そんな歴史を力にできる余裕は、今の野津田岳人にはないだろう。
 
 選出会見の場で、浅野は野津田に対して、そして他の選出されなかった仲間たちに対して、メッセージを発した。
「岳人とは、五輪代表チームが立ち上がった時から一緒にリオを目指してきたし、広島でも競争し合いながら切磋琢磨してきた。いいコンビであり、いいライバルだと僕は思っています。だからこそ、(岳人と)一緒に五輪のメンバーに入りたかった。ただそれは手倉森監督が決めたことだし、それに対して僕はどうこうは言えない。それに岳人はバックアップメンバー。リオにも来てくれるので、一緒に刺激しあいながら共に頑張りたいという気持ちで一杯です。
 
 監督が言うように、今回のメンバーがどういう形であろうと、それは託される人と託す人に分かれるだけで、僕らはひとつのチームに変わりはない。今回、僕は託される方になった。だからこそ、託してくれるメンバーのために、戦わなければならない。今まで一緒にリオを目指してきたU-23日本代表は、70人以上のメンバー。その全員がひとつのチームとして頑張っていけたらと思うんです」
 
 この世代は「勝てない」とずっと言われ続けてきた。その悔しさを共に味わって闘争心に変えて五輪出場を掴みとった男たちは、今度はリオで、全員の力でメダルを目指す。「(勝てないと)言っていた人たちを絶対に見返すつもりで共に戦ってきた」仲間たちの思いを力に変え、リオのピッチに立てない友と一緒に、浅野拓磨は勝利のゴールを決める。そのことだけに集中している。
 
取材・文:中野和也(紫熊倶楽部編集長)
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