格上の敵をどう倒すか? あまりに甘い目論見でバルサに惨敗したバレンシア【コラム】

2025年03月05日 小宮良之

神に祈るだけでは奇跡は与えられない

バレンシアは0-5の屈辱的完敗を喫した。(C)Getty Images

 力の劣るチームが格上の敵をどう倒すか?

 それは、サッカーの醍醐味の一つと言えるだろう。

「柔よく剛を制す」
「大番狂わせ」
「アップセット」
「金星」

 大衆はそういう見出しが嫌いではない。そこに「物語」を感じるからだろう。旧約聖書で、ダビデが小さくても機転の良さと知性とで巨人ゴリアテを倒したように、波乱を起こす話を人々はとにかく好む。日常生活では、こうした逆転劇は起こらない。だからこそ、何かに屈せざるを得ない人々が、その戦いに自分を重ね合わせるのだ。

 その点、どう勝つか。その手段、方法が問われる。神に祈るだけでは、奇跡は与えられない。

 スペイン国王杯準々決勝、バレンシアは本拠地メスタージャに強力な攻撃力を誇るFCバルセロナを迎え撃ち、彼らなりに勝つ算段を整えていた。真っ向勝負は厳しい。ラ・リーガで降格圏内をさまよい、深刻な低迷にあるだけに、策を用いるしかなかった。

「ラインをコントロールしながら攻撃を避け、カウンター一発で沈める」

 バレンシアが選んだのは、そのシナリオだった。ゴール前まで押し込まれてしまったら、アクシデント一つで失点を浴びる。そこで、できる限りラインを高く保ち、攻撃を遠ざけながら、自分たちの攻撃を有利にするため、スピード、パワーのある1トップ、ウマル・サディクに一発を託した。

 しかし、あまりに甘い目論見だった。

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 5バックを選んだのは、守備の綻びを最低限にする狙いがあったのだろうが、5人でラインをコントロールするのは簡単ではない。人数が増えれば増えるほど、ラインを揃えるのはズレが出る。結局、オフサイドに失敗する形で裏を破れてしまい、序盤から失点を繰り返した。前半30分も経たないうちに、0-4とリードを許し、早くも万事休すだった。

 結局のところ、"守りを固めたいが、前にも出たい"という中途半端な姿勢があだとなったと言える。付け焼刃の布陣は壊滅。サディクもレアル・ソシエダで不遇を受け、移籍してきたばかりでカウンターを実行できるような武力は持たなかった。攻守、すべてがちぐはぐだったのである。

 バレンシアは下馬評通り、強敵バルサに0-5で屈した。本拠地での大差は、屈辱的と言える。ファンの中には、前半でスタジアムを後にする者もいたほどだ。

 実際のところ、ジャイアントキリングという現象は簡単には起きない。そこには必然と偶然が両方とも必要になる。周到な準備や適性が欠かせず、多くの場合、巨大な敵に組み敷かれ、叩き潰される。

しかし、巨人をひっくり返すのは痛快なドラマであり、人々はその風景を求めるものだし、そこにサッカーの熱源はあるのだ。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。

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