U-20W杯の出場権を引き寄せた“2度のコイントス”。主将・市原吏音が明かす、サポーターとともに戦ったPK戦の舞台裏【現地発】

2025年02月24日 松尾祐希

運命を分けた判断

日本はイランとの接戦に勝利。市原はPK戦で最後のキッカーを務めた。写真:佐藤博之

[U-20アジア杯・準々決勝]日本 1(4PK3)1 イラン/2月23日/Shenzhen Youth Football Training Base Centre Stadium

 負ければ終わり、勝てば出場権獲得――。船越ジャパンの運命を分けたのは"コイントス"だった。

 2月23日に行なわれたU-20アジアカップの準々決勝。1勝2分の2位でノックアウトステージに進出した若き日本代表はイランに手を焼いたが、PK戦を制して今年9月開幕するU-20ワールドカップ行きの切符を手にした。

 戦前の予想通り、序盤は相手のロングボールに苦戦。173センチの左SB髙橋仁胡(セレッソ大阪)が狙われ、高さと強さを生かしたパワフルなアタックを跳ね返せなかった。自陣で耐える時間が続くと、開始5分にゴール前の混戦から失点。早々にビハインドを背負い、課題としていたゲームの入りでつまずいた。

 それでも、徐々にボールを動かしながら主導権を掌握。30分にはMF小倉幸成(法政大)のミドルシュートで追い付き、以降も自分たちのリズムで戦った。しかし、何度も決定機を作りながら決め切れない。90分で決着が付かずに15分ハーフの延長戦へ。そこでもスコアを動かせず、勝負の行方はPK戦に委ねられた。
 
 延長後半が終わり、ベンチの前で円陣を組んだ選手とスタッフ。輪が解けるとキャプテンのCB市原吏音(RB大宮アルディージャ)は一足先にピッチ中央へ向かい、イランの主将DFエルファン・ダルビッシュ・アーリと主審を待った。

 笑顔でふたりを迎えた背番号5は、2度行なわれたコイントスをいずれも制すると、まず陣地のチョイスで日本サポーターが構えるゴール側を選択。そして、先攻後攻を決める際は後者を選んだ。

 なぜ、このような判断を下したのか。試合後、市原は舞台裏を明かした。

 蹴る場所を決める1回目のコイントス。これは言うまでもなく、最初からファンが集うゴール裏で蹴りたいという想いがあった。

「サポーターの方々が来てくれたおかげで勝てました」とは市原の言葉。異国の地で戦うなかで、現地に応援に駆け付けた人たちの声は大きなパワーになる。「これは大きかったですね。吏音が決めてくれたけど、サポーターの前で蹴れるのは相当大きかった」と船越優蔵監督が感謝を述べれば、4番目のキッカー・MF佐藤龍之介(ファジアーノ岡山)も「間違いない」という言葉で声援に後押しされたことを強調した。
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