「死闘でしたね。死闘だった」日本代表CBがELプレーオフであらためて実感した“一本の怖さ”。「20本、30本、デュエルに勝っても…」【現地発】

2025年02月21日 中田徹

「ホントにみんな、まともに歩けないぐらい最後まで走った」

名門アヤックスとのしびれるような激闘を経験した町田。悔しい敗戦ながらも充実の表情を浮かべた。(C)Getty Images

 ヨーロッパリーグ(EL)のノックアウトフェーズ・プレーオフでアヤックスと当たったユニオン・サン=ジロワーズは、ホームでの第1レグを0-2で落としていた。2月20日に行なわれた第2レグはアヤックスの本拠地、ヨハン・クライフ・アレーナでの試合ということもあり、ユニオンSGの勝ち上がりはかなり厳しいと思われた。
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 しかし、前半のユニオンSGはエールディビジの首位チームを相手に怒涛の攻めを繰り広げ、開始28分で2-0にすると、アヤックスに退場者が出たことから、一気に優勢に立った。

 それでも後半に入るとアヤックスは4-3-3(MFクラーセンが退場になった後は4-4-1)のフォーメーションを5-3-1にすることで、ユニオンSGの2トップ・1シャドー&ウイングバックシステムに合わせ、決定的なチャンスを作らせないまま、試合を進めることに成功。延長前半3分にMFテイラーが値千金の決勝PKを決めて1-2とする。こうしてユニオンSGは今季のELの舞台から姿を消した。

 夜9時キックオフの試合が延長戦にもつれ込んだということもあり、DF町田浩樹がミックスゾーンに姿を現わしたときには、翌日の0時半になっていた。「死闘でしたね。死闘だった」。開口一番、彼はそう言った。

「みんな出し切った。ホントにみんな、まともに歩けないぐらい最後まで走ったので、本当にチームメイトを誇りに思います。いやあ、だから勝ち抜きたかったですけれど」

 誇りに思える勝利だった。しかし悔しい勝利でもあった。タイムアップの笛が鳴ると、町田は睨みつけるようにクリス・カバナ主審のもとに歩み寄っていた。それというのも後半アディショナルタイム、アヤックスの守護神パスフェールがパンチでクロスを弾いた際に、まともにFWロドリゲスの顔面に入って流血したのだ。ベルギーのテレビ実況は「明らかにPKです!」と叫んだが、VARが介入することすらなく試合は進んだ。

「チームメイトが大量に流血しているのに(VARの)チェックが何も入らないというのは、ちょっと納得がいかなかったです。まあアウェーなんで(苦笑)。審判もたぶん...、難しいと思いますけれど」

 それから町田はピッチの上に座り込んだ。

「ホントに足の至るところがツってしまった。久しぶりに120分やりました。(ベルギーに来てから)やってなかったと思う。数年ぶりです」

 
 チームメイトとアウェーサポーター席のところまで行って挨拶し、足取り重くロッカールームへ引き上げようとすると、セバスチャン・ポゴニョーリ監督から何やら囁かれた。

「『本当にグッドゲームだった。悔しいけれどよくやった』と褒め称えてくれたので、余計に勝って喜ばせたかった。勝ったんですけれどね(苦笑)。だけど勝ち抜いて喜ばせたかった。(声のトーンを上げて)いやあ、悔しいですね。ちょっとここ数年で一番悔しいかもしれないです」

 アヤックス相手にユニオンSGは34本ものシュートを見舞った(アヤックスのそれはわずか7本)。3バックシステムの左に構えた町田は前半、相手の右ウイングであるラスムッセンを常に視界に入れつつ、アヤックスのMF陣の攻め上がりにも冷静に対処。相手がベルフハウスの偽9番から、トラオーレの1トップシステムに変更した後半は、右に流れがちな29歳のアタッカーと飽くなきワン・オン・ワンを展開し、地上戦と空中戦で完勝したうえ、敵陣に攻め上がってチャンスメイクやフィニッシュワークにも関わった。

「(完敗した第1レグで試合に出られず)自分が出ていたら正直、うまくやれたという思いがある。それは今日、見ていてもらったら分かると思います。今シーズンは正直、コンディションやパフォーマンスが良くないなかで若手に一瞬、スタメンを奪われかけそうになりました。それでも今日のパフォーマンスでコーチや仲間たちから『リアル・コーキ・イズ・バック(町田浩樹が完全復活した)』と言われた。去年のいいパフォーマンスが戻ってきたと自分でも感じました。だからこそチームを勝たせられる活躍をしたかった」

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