【川崎】“苦労人”大塚翔平が大一番で感じた楽しさと課題

2016年06月20日 小田智史(サッカーダイジェスト)

「どうやって点に絡んでいくのか、それが自分の課題」

ギャップに入り込んでボールを引き出し、ダイレクトプレーを交えてチャンスメイク。大塚が福岡戦で見せたプレーは決して悪くなかった。 (C)SOCCER DIGEST

[J1・1stステージ16節]福岡2-2川崎 6月18日/レベスタ
 
 福岡戦でJ1・6年ぶりのスタメン出場となった大塚翔平は、腰痛で欠場した中村憲剛に代わってトップ下を務める大役を任された。遠征前、中村から「頑張ってくれ」とエールを受け、「試合開始から自分の力を100パーセント出そうと思って臨んだ」という。
 
 チームは開始15分で2点のビハインドを負ってしまったが、大塚は相手の守備ブロックの間に入ってボールを引き出し、大久保嘉人や小林悠らとのダイレクトプレーを交えて攻撃のリズムを作っていく。
 
「簡単に叩いて、また動き直して良い場所で(ボールを)もらう形をどんどん繰り返していこうと意識していました。それが自分の持ち味であり、生命線でもあるので」
 
 73分の大久保の同点弾は、大塚のミドルシュートのこぼれ球に飛び込んだ大島僚太が獲得したPKによるものだ。大久保が「翔平はどんどん(スペースに)入ってきてくれて良かった。翔平がDFを引き出した時に誰かが入ってくれば……という惜しいシーンはあった」と評したように、攻撃の潤滑油となり、一定の手応えを得られたのかと思いきや、「(自分は)点を取れなかったし、点につながるプレーが少なかった」と自己評価は厳しい。相手は最下位の福岡であり、キャプテンの中村と比べてしまうと足もとにも及ばない、と想いがあるのだろう。
 
「(中村)憲剛さんの代わりは誰も務められない。どうやって点に絡んでいくのか、それが自分の課題。まだまだレベルを上げないといけない」
 
 それでも、G大阪ユースからトップチーム昇格後は出番に恵まれず、千葉、北九州と渡り歩き、今季トライアウトで川崎入りを勝ち獲った大塚にとって、優勝の懸かった大一番の試合を経験できたことは、大きな刺激になったようだ。
 
「(試合は)楽しかった。こういう試合に出るために準備してきたので。もっとしびれる試合で出場機会をもらえるようにレベルアップして、今度はチームを助けられるようなプレーをしたい」
 
 自力優勝は消滅してしまったが、まだ第1ステージのタイトルの可能性が完全に潰えたわけではない。さらにチャンピオンシップ進出のための勝点獲得、何より大塚にとっては、今後の出場機会を勝ち取るために、一分一秒たりとも無駄にはできない戦いが続く。
 
「(第1ステージ最終節の)大宮戦はホームでやれるし、勝って終わることが大事。自分たちが勝たないと何も始まらない。(鹿島の)結果待ちとはいえ、そこでまた何か起こるかもしれない。次の試合のメンバーはどうなるか分かりませんけど、練習からしっかりやってまたチャンスをもらえるように頑張ります」
 
 プロ8年目、ようやく自分の"居場所"を見つけた苦労人は、さらなる飛躍を誓う。
 
取材・文:小田智史(サッカーダイジェスト編集部)
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