「Jリーグでは経験しなかっただろうが…」欧州カップ戦で“一人三役”を演じた日本代表DFを指揮官は手放しで称え、地元メディアは妙技に唸った【現地発】

2025年01月24日 中田徹

ローマ戦、AZのスイッチを入れたのは毎熊だった

攻守両面で高質なプレーを披露した毎熊(右)。ローマ撃破の立役者の一人だ。(C)Getty Images

 1月23日、ヨーロッパリーグ(EL)のAZ対ローマは80分まで0-0のまま進んでいた。AZの右SB、毎熊晟矢は味方にスローインを投げ、そのリターンをストライカーのトロイ・パロットにダイレクトパスで通す。このパスで攻撃のスイッチが入ったAZは一気呵成に攻め込み、左SBのデビッド・メラー・ウォルフェのクロスからパロットが値千金の決勝ゴールを決めた。
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 セリエAのお株を奪うウノ・ゼロの勝利。試合後の記者会見で「この日、一番楽しかったシーンは何か?」と問われたマールテン・マルテンス監督は「パロットのゴール。そして毎熊の落ち着いたお膳立てだ」と答えた。

 このシーンを毎熊自身は「自分は前に供給しただけです。そこから前の選手たちのクオリティーが高かった。ヨルディ(クラーシー)がちょっとためて(アシストを記録したメラー・ウォルフェに)パスを出したのが一番大きかったですね」と謙遜しながら振り返る。だが、オランダの専門誌『フットボール・インターナショナル』のウェブ版は「毎熊のパスによってAZは前線に"3対3"の同数で攻め込む状況が生まれた」と解説した。

 しかし何と言っても、この夜、素晴らしかったプレーは、毎熊が76分と77分に披露した連続の攻撃参加だろう。

 まずは76分のビッグプレーから。AZが最終ラインからビルドアップを開始した。自陣右サイドに張った毎熊が対面のアンへリーニョを外して内側にドリブルを仕掛け、さらに味方とのワンツーでハーフウェーラインを越して敵陣中央の深い位置まで侵入した。味方にボールを預けた毎熊は、そのまま敵のゴール間近のところまで走り込み、右からのクロスをヘッドで合わせた。残念ながらシュートはミートせず、GKミカ・スビラルに拾われてしまう。
 
 しかしローマに押されていたなか、起点作り、チャンスメイク、フィニッシュワークと一人三役を演じた毎熊の攻撃参加にスタジアムは盛り上がり、チームに勇気を与えた。

 直後の77分、AZはクラーシーを軸に右サイドで起点を作り、最後は毎熊のスルーパスからMFマイナンスが相手ゴール間近のところまで迫ってCKを獲得した。この2分間でスタジアムの雰囲気が最高潮に達し、80分のパロットのゴールにつなげたのだ。

「(76分、77分のような)ああいう形を前半から作りたかったんですがうまくいきませんでした。ああいう攻撃的なプレーが自分の良さだと思います。相手ペースの時間が長いなか、あのプレーで自分たちの時間を作ることができました。ホントはもっとああいう場面を作りたいですけれど、良かったです」

――あのプレーでAZのスイッチが入りました。

「会場の雰囲気も含めて、そうでしたね」

次ページこれで3戦連続のクリーンシート。「試合前のプラン通りに守れている」

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