香川真司の良き相棒またはライバルに? ドルトムント移籍の18歳エムレ・モルがEUROで垣間見せたポテンシャル

2016年06月16日 白鳥大知(サッカーダイジェスト特派)

縦の鋭さが足りなかったトルコの攻撃をスピードアップさせた。

積極的にボールを引き出し、トルコの攻撃に変化を付けたエムレ・モル。ポテンシャルの高さ見せた。写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

 少年のような顔立ちの小柄な背番号21が、タッチライン際に立つ。69分、ジェンク・トスンに代わってピッチに送り出されると、トルコ・サポーターはこれまで以上の野太い声でエールを送った。
 
 トルコにとってEURO2016の初陣だった6月12日のクロアチア戦で、メジャー大会デビューを飾ったのが、18歳の神童エムレ・モルだ。
 
 今年に入ってU-21代表に飛び級で入ったが、A代表のEURO2016予選は出場はおろか招集すらなし。しかし、15-16シーズンに生まれ育ったデンマークのノアシェランで一気に台頭し、本大会に向けた登録メンバーに大抜擢されると、5月29日のモンテネグロ戦で初キャップを刻む。6月7日には今夏のドルトムント移籍が決定した。
 
 投入時はトルコが1点のビハインドを負っており、担ったのは「攻撃の切り札」という役割で、触れ込みは「トルコのメッシ」だ。
 
 さて、どんなものかと注視していると、いきなり相手の最大のスター、ルカ・モドリッチに蹴りを食らわせる。パーソナリティーは強そうだ。
 
 ポジションは4-2-3-1のトップ下。168cm・60kgの軽量級、正確なテクニック、ほぼ左足一本のプレースタイル、重心の低さ、一気に加速するドリブル――。なるほど、たしかにメッシとの類似点は多い。
 
 Aマッチ3試合目の18歳ながら積極的にボールを要求し、80分には右サイドに流れて華麗なヒールパス、90分には切れ味鋭いドリブルからシュートを放った。
 
 初の大舞台でさすがに緊張はあったかミスも少なくなく、結果的にゴールやアシストは記録できなかったとはいえ、アジリティ―とテクニックで縦の鋭さが足りなかったトルコの攻撃をスピードアップさせ、変化を付けていた。
 
 若手の目利きに定評のあるドルトムントが目を付けただけあって、ポテンシャルは間違いなく高い。新シーズンのドルトムントはヘンリク・ムヒタリアンの売却を余儀なくされそうで、エムレ・モルはその後釜として位置づけになりそうだ。
 
 4-3-3なら右サイドアタッカー、4-2-3-1なら右サイドかトップ下が主戦場になる可能性が高く、日本代表の香川真司の良きパートナーまたはライバルになるかもしれない。
 
 初戦のパフォーマンスを考えれば再び出番がやってきそうで、6月17日のスペイン戦、6月21日のチェコ戦でも注目したい逸材だ。
 
現地取材・文:白鳥大知(サッカーダイジェスト特派)
 
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