超高校級FW高岡伶颯が攻守で示した凄み。日章学園で培った“技”や“ハートの強さ”でプレミアの舞台へ【コラム】

2025年01月01日 松尾祐希

だからこそ、やり切った気持ちがあった

2回戦で矢板中央に敗戦。試合後に高岡は悔し涙を流した。写真:田中研治(サッカーダイジェスト写真部)

[高校選手権・2回戦]矢板中央(栃木)2-1 日章学園(宮崎)/12月31日/フクダ電子アリーナ

 試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、日章学園のFW高岡伶颯(サウサンプトン加入内定)はキャプテンマークをそっと外した。

 3年間一緒に戦った仲間を労いながらセンターサークルに向かって歩き、決して自身の感情だけは表に出さないようにしていた。しかし――。

 ピッチに立てなかったチームメイトたちが待つスタンドに挨拶に行くと、涙腺が決壊した。目頭を何度も拭い、言葉に詰まる。期待に応えられず、夢半ばで大会を去る申し訳なさが高岡の心を覆った。

「悔しい想いはある。でも、サッカーなので(勝ち負けがある)。1年生からスタメンでフル出場させてもらい、監督に感謝しています。親や親戚、(チームメイトなどの)身近な人たちが本当に支えてくれたからここに来られた。最高のサポートがあったからこそ、(スタンドに行った時に)自分がまだまだやらないといけないなって思わされて...。それを思い出したら、涙が出てきた感じです」

 1年次は1回戦で前橋育英に1-2で逆転負け、2年次も初戦で名古屋にPK負け。自身はいずれも無得点で不完全燃焼に終わっていた。そして、迎えた高校ラストイヤーは"20点"という壮大な目標を掲げ、6-1で勝利した西目との1回戦でハットトリックを達成。3年目にして選手権初勝利を掴み、矢板中央との2回戦に臨んだ。

 高岡は1点ビハインドの前半25分に、2戦連発となる同点弾。だが、チームは後半に勝ち越し点を奪われ、1-2で敗れた。
 
 早すぎる敗退。試合後に目頭を熱くさせた一方で、高岡の心は晴れ晴れとしていた。ミックスゾーンに現われた男の目に涙はすでにない。笑顔を交えながら取材に応じた高岡は言う。

「みんなともっとサッカーをしたいという想いはありましたし、日本一になるために入学してきた。でも、全く後悔はない」

 矢板中央に敗れたものの、日章学園で過ごした1000日間で培った"技"や"ハートの強さ"を随所に見せつけた。だからこそ、やり切った気持ちがあった。

 とりわけ、3年間の成長を象徴したプレーが同点弾の場面だ。左サイドを抉ったMF有働嵩常の折り返しに合わせ、右足でネットを揺らした。もちろん、シュートやゴール前のポジショニングも秀逸だったが、何より素晴らしかったのは、得点の起点になった守備。ミドルゾーンで自らボールを奪うと、そのこぼれ球を味方が拾って有働に展開。高岡は全速力でボックス内に走ってフィニッシュに持ち込んだ。

 攻撃力に目が行きがちだが、献身性も持ち味。二度追い、三度追いは当たり前で、泥臭く相手に喰らいついていくスタイルは高岡の代名詞だ。これもまた、日章学園で培った武器のひとつだ。

【動画】高岡が今大会4点目。矢板中央vs.日章学園ダイジェスト

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