「使うつもりはなかった」2年前の王者・岡山学芸館は初戦敗退に号泣。日本一メンバーの主将は大会直前に全治3か月の大怪我…それでもラスト4分で投入した指揮官の思い【選手権】

2024年12月30日 江國 森(サッカーダイジェストWeb編集部)

「悔しい選手権でした」

後半36分から主将の岡野(7番)を投入した岡山学芸館だが、あと一歩及ばなかった。写真:田中研治(サッカーダイジェスト写真部)

[高校選手権・1回戦]矢板中央(栃木) 2-1 岡山学芸館(岡山)/12月29日/フクダ電子アリーナ

 試合終了のホイッスルが鳴ると、岡山学芸館の選手たちはピッチに崩れ落ちた。

 号泣し、しばらく起き上がれない選手もいる。その中で、気丈に声を掛けていたのが、キャプテンの岡野錠司だった。

 2年前にこの選手権を制した日本一メンバーのひとり。試合には出場できなかったが、太田修次郎、東海祐也と共に1年生で名を連ねた。

 昨年は怪我でメンバーに入れず、キャプテンとして満を持して臨むはずだった今大会だったが、12月19日に紅白戦で後十字靭帯損傷の大怪我を負い、全治3か月と診断された。

 それでも、前日になんとか全体練習に復帰したものの、万全には程遠く、「100%でできる状態ではなかった。出す気もなかった」と高原良明監督は明かす。

 だが、1点にビハインドの後半36分、ラスト4分というタイミングで、指揮官はこのMFをピッチに送り出す。

「やっぱり最後、ピッチに立たせたいなという思いで。錠司を入れて、何とかもう1回、最後まで諦めずに相手ゴールに迫りたいという思いで投入しました。スコア的にもやられてるし、去年もピッチに立ててないんで」

 しかし、その1分後に痛恨の失点。アディショナルタイム4分に、FW香西健心がFKを叩き込んだが、もう時間は残っていなかった。
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 試合後、岡野は目を潤ませながら、「自分が出たときは負けてたんですけど、1点差だったんでみんなを鼓舞して、まだチャンスは絶対あるってみんなに言ってたんですけど、失点しまって。自分がしたいことはできなかった、プレーで見せることできなかったんですけど、最後出させてもらっていい経験になったと思います」と声を絞り出した。

 泣きじゃくっていた太田には、「修次郎がいなかったらここまで来れてなかった。ありがとう。自分が怪我して、最初からピッチに出られなくて、ごめん」と声を掛けたという。

「1年生で優勝を経験できたんですけど、試合に絡めなかったので、悔しい選手権でした」

 それでも、満身創痍でプレーしたこの数分間は、かけがえのない経験になるはずだ。

取材・文●江國森(サッカーダイジェストWeb編集部)

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