ロス五輪を目ざす大岩ジャパンのキーマンは羽田憲司コーチ。異例の“ダブルチーム”で託されたタスクの全容と求められるパイプ役の重責

2024年12月26日 松尾祐希

難しいメンバー選考。基本的には船越ジャパンが優先

2つの同じ年代の代表チームでコーチを努める羽田氏。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 12月12日の夕刻に届いた一通のメール。日本サッカー協会から発表されたプレスリリースにはこう記されていた。

「【U-23日本代表】第34回オリンピック競技大会(2028/ロサンゼルス)U-23日本代表 監督・スタッフについて」

 監督に任命されたのは、パリ五輪で指揮を執った大岩剛氏。2大会連続で同じ指揮官のもと、五輪に出場すれば日本サッカー界では史上初となる。

 アドバンテージは計り知れない。今回の就任発表は過去の五輪代表と比較しても異例の早さで、強化を円滑に進めていくうえでプラスに働く。2016年のリオ五輪(手倉森誠監督)、2021年に行なわれた東京五輪(森保一監督)の時は、前回の五輪が終わり、1年以上が経過したタイミングでの就任だ。大岩監督が率いたパリ世代は、コロナ禍の影響で東京五輪は21年夏の開催だったが、同年12月に任命されてからのスタートだった。

 本大会までの活動期間は2年半強で、いずれもU-20ワールドカップが終わったタイミングで本格的に始動している。しかし、今回は五輪本大会が終了して半年経たずに体制が確定し、早い段階で選手の把握や発掘ができる点は、前倒して就任したからこそのメリットだろう。

 その一方で就任時期が早まった影響で、過去の五輪代表と比べて異なる事情が絡んでいる点も見逃せない。2025年シーズンに限っては、複雑な状況下でスカッド作りを進めていく必要がある。U-20ワールドカップとU-23アジアカップ予選(本大会は26年開催予定)が来年9月に控えており、スケジュールがバッティングしているからだ。

 U-23アジアカップは23歳以下の大会になるが、強化を図るために現時点で日本サッカー協会はロス五輪世代の選手で戦う方向性を明言している。そのため、来年9月上旬に開催される予選も2005年生まれ以降の面々で挑む。
 
 一方で来年9月下旬に開幕するU-20ワールドカップを目ざす船越優蔵監督のチームも、同じロス五輪世代が最上級生となる。来年2月にU-20アジアカップ(U-20ワールドカップの最終予選)で4位以内に入らなければ出場権を得られないが、強化のために残された時間はそう多くない。

 そのため、来年は2つの同じ年代の代表チームが活動する形を取り、異例の"ダブルチーム"体制を敷くことになった。

 同じ年代の選手が選考対象となる関係で、メンバー選びが難しい。基本的には船越ジャパンが優先となるが、U-20ワールドカップはインターナショナルマッチウィーク外の開催。参加できない海外組が発生する可能性があり、その場合は大岩ジャパンの活動に加わり、インターナショナルマッチウィーク内に行なわれるU-23アジアカップ予選のメンバーに選出されるパターンが想定されている。

 こうした状況下で、最終的にロス五輪を目ざすチームのスカッド構築を円滑に進めていくためには、橋渡し役が必要となる。そこで羽田憲司氏に白羽の矢が立ち、両チームでコーチを務める形となった。

 現役時代も含めて大岩監督と長く共にしており、前回大会ではヘッド格でサポートした実績を持つ。パリ五輪後の9月からは古巣の鹿島で指導にあたるなど、国内外での経験値は随一。大岩ジャパンと船越ジャパンを繋ぐ役として、これほど相応しい人材はいないだろう。

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