【指揮官コラム】カターレ富山監督 三浦泰年の『情熱地泰』|ある寿司職人から聞いた「新人時代」の話

2016年05月30日 サッカーダイジェストWeb編集部

寿司職人の大将が初めて寿司を握った時に学んだこと。

富山ではさまざまなジャンルの人との出会いがある三浦監督。今回は寿司職人の大将から「良い言葉」を聞けたという。(C) SOCCER DIGEST

 富山と言えば魚が旨い。
 
 ホタルイカ、白魚、寒ブリ、かに、海老はもちろんノドクロにカワハギ……。いろんな地方で味わえる魚が富山にはほぼすべてあり(美味しい時期は決まっているらしいが)、わざわざ県外まで足を伸ばさなくても食せるのだそうだ。
 
 そして、そうしたグルメを気軽に食べられるという魅力もある。お寿司で言えば回転寿司のクオリティもかなり高い。一度、友人とある回転寿司店に食べに行ったのだが、本当に凄かった。味も確かだが、サービスも旺盛で、味噌汁がお代わり自由で中味は蟹。ちょっと考えられないサービスなのだ。回転寿司のレベルもここまで上がったのかと感心する。
 
 お寿司屋さんと言えば頻繁に行けるわけではないが、知人に紹介されてお邪魔してみた店がある。
 
 大将と息子さんがカウンターの向こうで握る雰囲気の良いお店。団体で最初に行った時はろくに挨拶もできなかったため、二度目はひとりで挨拶も含め覗いてみた。
 
 最初に訪れた時に、色紙にサインをして帰り「写真は後日で」と言ってあったので、挨拶とともにチームのポスターと静岡の実家が送ってくれたお茶を手土産に、カウンターでひとりで食事をさせてもらった。
 
 そんな時間のなかで、寿司屋の大将のすごく「いい話」が聞けた。この道で数十年という大将が初めて寿司を握った時の話だ。
 
 サッカーの話から発展した話で、修行を始めて1年半、一度も握った事のない寿司を「握れ!」と言われて嬉しくて必死にかんぴょう巻きを握ったという話であった。
 
 当時、経験のない大将がその時に寿司の難しさを知ったという。というのも、経験のない人が同じように握ったつもりでも、握ったかんぴょう巻きの太さは、時間が経つにつれて太さが違ってくるという。若かりし頃の大将が同じ太さに握ったつもりが、シャリの量が違っていたのだ。
 
 実は、シャリは時間が経つと細いのから太いのまで、大きさがまちまちになってくるという。あの経験が今に生きていると、大将は語った。
 
 そしてシャリと手が喧嘩してはいけない、シャリに手が優しく触れ合い、握っていく。これを若い頃に知った……と。

次ページ大将の言葉に胸を打たれ、「明日もまた富山のために」と強く思う。

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事