【鹿島】味方をも欺く鮮やかなラストパス! “24歳”の柴崎はこのままでは終わらない

2016年05月29日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

「常に責任とかを背負いながらやってきた。それはこれからも変わらない」

土居の先制点をお膳立てした柴崎(10番)は、金崎(33番)のアシストからチーム3点目をゲット。24歳で迎えた最初のゲームで圧巻のパフォーマンスを示した。(C)J.LEAGUE PHOTOS

 前半終了間際だった。相手陣内のバイタルエリア、土居聖真からのバックパスを、柴崎岳はそのままダイレクトで叩く。リターンを受けた土居は正確なトラップから前を向き、右足を振り抜いて、待望の先制点を突き刺した。
 
 それまで鹿島は優位にゲームを進めていたが、甲府の人数を割いた守備の前に攻めあぐね、なかなかゴールを奪えずにいた。ボランチの柴崎は要所でプレーに絡み、長短のパスを駆使して攻撃を組み立てながら、ついに均衡を破るゴールをお膳立てした。
 
「(自分のところにパスが)来るとは思っていなかった。逆サイドに振るかと思ったけど、あの場面では(相手DF同士の)間が空いた。岳もそれを感じて出してくれたと思う」
 
 試合の流れをグッと引き寄せるゴールを決めた土居は、先制点の場面をこう振り返る。一旦は柴崎に預け、攻撃をやり直すかと予想したが、出し手の柴崎は素早い判断で土居にパスを送り返した。
 
「相手(の陣形)がちょうど"割れた"ので。聖真も上手く動き出していましたし。気持ち良くシュートをさせてあげられるパスを、と」
 
 さらに鹿島の背番号10は51分、高い位置で味方がボール奪取に成功すると、迷いなくゴール前へと走り込み、金崎夢生の横パスからチーム3点目を流し込んだ。
 
「夢生君が上手くパスを出してくれたので良かった」
 
 ゲームメイクだけでなく、1得点・1アシストと決定的な仕事をこなしてチームを完勝へと導いた。試合前日には、24歳の誕生日を迎えていた。「特にそれは考えていないですけど」と、特別な感情はなかったようで、「いつもどおり、チームに貢献すること。優勝が求められるクラブで、こうしてプレーして、常に責任とかを背負いながらやってきた。それはこれからも変わらない」と、あくまでも自然体でピッチに立ち、戦っていたという。
 
 来月に開催されるキリンカップのメンバーからは惜しくも漏れた。本人も忸怩たる想いがあるに違いない。もちろん、このままで終わるわけにはいかない。9月から始まるロシア・ワールドカップのアジア最終予選を見据えつつ、鹿島では悲願のリーグタイトル奪還を目指す戦いが続く。
 
 24歳で迎える2016年残りのシーズンは、柴崎にとってはそのキャリアにおいて重要な局面となるはず。ひとつ歳を重ね、新たな一歩を踏み出した稀代のプレーメーカーの"逆襲"に期待したい。
 
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)
 
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