【現地記者の英国通信】ユナイテッドが12年ぶりに戴冠した「FAカップ」決勝の舞台裏

2016年05月27日 スティーブ・マッケンジー

1990年の再戦を制したのはユナイテッド! それにはファーガソンもご満悦。

リンガードの決勝弾で12年ぶりにFAカップを制したユナイテッド。これで2年連続の無冠は免れた。 (C) Getty Images

 5月22日、私はウェンブリースタジアムで行なわれたクリスタル・パレス対マンチェスター・ユナイテッドのFAカップ決勝を見に出かけた。このマッチアップは、再戦にまでおよぶ激戦となった1990年の決勝と同一のカードで、イングランドでも大きな話題となった。
 
 そもそも、FAカップの決勝はフットボールにおいても重要なイベントだ。私も幼い頃からテレビ画面を通して、常にその戦いの様子を眺めてきた。
 
 ただ、今年は少し例年とは違っていた。というのもFAカップ決勝は毎シーズン、晴々とし、少し汗ばむぐらいの天候に恵まれるものだが、その日は曇天で肌寒く、ファンもコートを着込むほどの変わった天気に見舞われた。
 
 そして、変わっていたのは天気だけではない。マッチデープログラムが10ポンド(約1590円)もしたのだ。いくら記念品だからとはいえ、プレミアリーグのプログラムの4ポンド(約550円)と比べると高いように思える。
 
 変わらないものと言えば、試合前の風景だ。私の暮らしている地域は、クリスタル・パレスファンが多く住んでいる場所で、試合当日の朝、17:30キックオフにもかかわらず、ビールを呑むクリスタル・パレスのファンの姿がいたるところで見られた。
 
 彼らは、試合前に露店に並んだクラフトビールとハンバーガーを頬張り、自分たちのチームのチャントを高らかに歌い上げるのだ。その姿は、決勝戦らしい殺伐とした雰囲気を醸し出すユナイテッドファンとは違い、騒がしくもあったが、古き良きイングランド・サッカーの明るさを感じられるものだった。
 
 会場に入ると、記者や関係者が座る席には著名人たちがズラリと並んでいた。なかでも、ユナイテッドのレジェンドであるアレックス・ファーガソンとボビー・チャールトンは圧倒的な存在感を放ち、あらゆる人々から歓迎を受けていた。
 
 私が記者席に座ってから驚かされたのは、隣に英紙「サンデー・タイムズ」で長年に渡って執筆活動を続ける著名なジャーナリストであるブライアン・グランビル氏が座っていたことだった。彼は1956年からすべてのFAカップ決勝を取材したという話を私にしてくれた。
 
 試合結果はというと、読者の皆さんはすでにご存じだろうが、110分のジェシー・リンガードの華麗なゴールでユナイテッドが延長戦を2-1で制し、通算12回目のFAカップ制覇となった。
 
 ユナイテッドの戴冠で、私が応援するウェストハムが来シーズン、ヨーロッパリーグに参戦することが決まった。
 
 私は心の中で「ユナイテッドよくやった!」と密かに喜びながら、記者席をあとにしたのであった。
 
文:スティーブ・マッケンジー
 
 
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