「マジか、コイツ、俺に話しかけんなよ」→「人と比べたことしかなかった自分が恥ずかしくなった」。「ライバルの粗を探し、悪口を言っていた」鄭大世の歪んだ心を矯正したチームメイトは?

2024年09月17日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

コイツには勝てない

鄭大世が清水時代に出会った恩人とは? 写真:サッカーダイジェスト

 元Jリーガーの鄭大世は言う。上手く行ってない時、追い込まれた時に人の本性が出る、と。

 彼自身、自分のことを「未熟だった」と振り返る。実際、清水エスパルス在籍時にドウグラスの加入でベンチ要員になって腹を立て、「ライバル(ドウグラス)の粗を探し、彼の悪口を言っていた」そうだ。

 しかし、ドウグラスの振る舞いを見ているうちに「自分が恥ずかしくなった」。

「僕は試合で使われなかった時に地獄のような気分になる。この世の全てを失ったような感覚になるし、気力が生まれてこない状態になります。そんな自分に試合直後、ドウグラスが『みんなで一緒に頑張ろうよ』と声をかけてきたんです」

 それを受け、鄭大世は「マジか、コイツ、俺に話しかけんなよ」と当時は思ったという。

「でも、その日家に帰って考えたんです。感情丸出しの僕にわざわざ声をかけるなんて、と。僕がドウグラスの立場なら、そういう奴は放っておきます。関わらないほうがいいじゃないですか。それが、ドウグラスはわざわざ来て『一緒に頑張ろう』と。心に余裕があるなって」
 
 そんなドウグラスに鄭大世は「ライバルはいるの?」と訊いたことがある。返ってきた答は「俺は人と比べたことがない」だった。それを聞いた鄭大世は「人と比べたことしかなかった自分が恥ずかしくなった」。

「必死こいてドウグラスをライバル視していた自分が本当に恥ずかしくなった。初めて認めたライバルが、ドウグラスでした」

 コイツには勝てない、鄭大世は心からそう思った。歪んでいた彼の心を矯正してくれた点で、ドウグラスは恩人のひとりだろう。

構成●サッカーダイジェストTV編集部

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