【移籍専門記者の秘話】マドリーはCL準決勝敗退ならジダンを解任し、アッレグリを招聘する算段だった

2016年05月11日 ジャンルカ・ディ・マルツィオ

アッレグリはユーベからの契約延長オファーに対して時間稼ぎをしていた。

マドリーはCL準決勝でシティに敗れていれば、ジダン(左)を解任してアッレグリ(右)を招聘する準備を整えていた。(C)Getty Images

「ここで敗退したら大きな挫折だろう」
 
 マンチェスター・シティとのチャンピオンズ・リーグ準決勝セカンドレグ(5月4日)を前にして、レアル・マドリーの指揮官ジネディーヌ・ジダンはこう言い切った。
 
 もちろん、挫折であることに疑いはない。それどころか、敗れていれば解任はほぼ間違いなかっただろう。マドリーの指揮を執る限り、シーズンを無冠で終えることは許されないのだ。
 
 一昨シーズンにクラブにとって悲願だったデシマ(10回目の欧州制覇)をもたらしたカルロ・アンチェロッティでさえも、昨シーズンはリーガ・エスパニョーラで2位に終わり、チャンピオンズ・リーグでも準決勝でユベントスに土を付けられたため、解任の憂き目に遭った。
 
 実を言えば、そのユベントスを率いるマッシミリアーノ・アッレグリは、つい数日前までマドリーの有力な次期監督候補だった。もしマドリーがシティに敗れていれば、アッレグリはすぐにマドリードに飛んで、来シーズンからの契約にサインしただろう。話はそこまで進んでいたのだ。
 
 実際、ユーベは年俸を300万ユーロ(約3億7500万円)から500万ユーロ(約6億2500万円)にアップして2018年まで契約を延長する準備を整えていたが、アッレグリはサインせずに時間を稼いでいた。マドリードから「もしジダンがチャンピオンズ・リーグ決勝進出を逃したら……」というコンタクトがあったからだ。アンチェロッティ解任からわずか1年後、マドリーが再びイタリア人監督を迎える可能性は、きわめて高かった。
 
 しかし、それは実現することなく終わった。ジダンはシティを蹴落としてチャンピオンズ・リーグ決勝への切符を掴み、来シーズンの指揮権も同時に手に入れたのだ。
 
 こうしてアッレグリはすっかり準備できていた旅行鞄をほどき、マドリー対シティ戦の2日後(5月6日)、ユーベとの契約延長にサインした。当面の間、マドリードへの旅はお預けである。
 
文:ジャンルカ・ディ・マルツィオ
翻訳:片野道郎
 
※当コラムではディ・マルツィオ氏のオフィシャルサイトにも掲載されていない『サッカーダイジェストWEB』だけの独占記事をお届けします。
 
【著者プロフィール】
Gianluca DI MARZIO(ジャンルカ・ディ・マルツィオ)/1974年3月28日、ナポリ近郊の町に生まれる。パドバ大学在学中の94年に地元のTV局でキャリアをスタートし、2004年から『スカイ・イタリア』に所属する。元プロ監督で現コメンテーターの父ジャンニを通して得た人脈を活かして幅広いネットワークを築き、「移籍マーケットの専門記者」という独自のフィールドを開拓。この分野ではイタリアの第一人者で、2013年1月にグアルディオラのバイエルン入りをスクープしてからは、他の欧州諸国でも注目を集めている。
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