大岩監督から全幅の信頼を寄せられる木村誠二。攻守で輝く世代屈指のエアバトラー【パリ五輪の選ばれし18人】

2024年07月13日 松尾祐希

2年半の歩みは決して順調ではなかったが…

パリ五輪のメンバーに名を連ねた木村。覚悟を持って大舞台に挑む。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 パリ五輪開幕まで約2週間となった。ここでは56年ぶりのメダル獲得を目ざすU-23日本代表の選ばれし18人を紹介。今回はDF木村誠二(サガン鳥栖)だ。

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 木村はFC東京U-18に所属していた頃から期待され、各年代の世代別代表に名を連ねてきた。

 2019年11月には、U-20ワールドカップの一次予選を兼ねたU-19アジア選手権(現・U-20アジア杯)予選に参加。順調にステップアップを果たし、さらなる飛躍が待たれていた。

 しかし、2020年にトップチームへ昇格してからは苦難の連続。FC東京ではCB森重真人らの牙城を崩せず、1年目はリーグ戦で3試合に出場したのみ。そうした現状を変えるべく、2021年シーズンは京都サンガF.C.でのプレーを選んだ。

 だが、1試合の出場に終わり、夏に相模原SCへ活躍の場を求めた。ここでは17試合に出場して浮上の兆しを掴んだものの、2022年シーズンはまたしても苦戦。モンテディオ山形へ武者修行に出るが、わずか6試合の出場に留まる。前半戦を終えた8月にFC東京に戻る決断を下したものの、J1の舞台では6試合の出場に終わった。

 2022年3月に立ち上がった大岩ジャパンでも発足当初から継続して招集されてきた一方で、CBの序列では3、4番手を争うプレーヤー。メンタルの弱さも目につき、パリ五輪世代初の海外遠征となった2022年3月下旬のドバイカップでは現地の食事が口に合わないなど、コンディション調整に苦しんだ。

 以降もコアメンバーとして代表活動に参加したものの、不安定なプレーに終始。素晴らしいパフォーマンスを見せたかと思えば、軽率なミスを犯す場面が散見された。

 そうした状況下で飛躍のきっかけを掴んだのが、2023年3月に行なわれたU-22日本代表(現・U-23日本代表)の欧州遠征だ。先発したドイツ戦(2−0)では4バックの左CBに入り、大柄なアタッカー陣と互角以上の勝負を展開。後半開始から出場したベルギー戦(2−3)は3バックの左ストッパーとしてプレーし、守備だけではなくボールを果敢に持ち運んで攻撃の起点となった。
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 木村自身も手応えを掴んでおり、遠征後にはこんな言葉を残している。

「自分がこれまでやってきたもの、成長できた部分はちゃんと発揮できるようになっている。そこに対しての不安はないし、自分の力を出せば全くやれない相手ではない。J1でもこういう海外のトップ相手でも、自信を持ってどんどんやっていきたいです」

 この活躍が分水嶺となり、木村は代表で確固たる地位を確立。絶対的な存在とは呼べなかったが、大岩監督の信頼を掴み取る。クラブでは出場機会に恵まれなかったとしても、代表では安定感のあるプレーで最終ラインを牽引した。

 2024年を迎えてからも指揮官からの信頼は変わらない。今季は出番を求めて鳥栖に期限付き移籍をしたが、キャンプ中に負傷。その影響で、3月下旬の代表活動は参加できなかった。だが、4月半ばから5月初旬にかけて行なわれたU-23アジア杯(パリ五輪のアジア最終予選)でメンバー入り。もちろん、実践復帰を果たしたうえでの招集だったが、勝負がかかる大一番と考えれば、3月に招集した面々を優先しても不思議ではない。

 それでも、指揮官の想いは揺るがなかった。その期待に木村も応え、主軸として起用されてパリ五輪の出場権獲得とアジア制覇に貢献。6月のアメリカ遠征もコンディションの問題で参加できなかったが、本大会のメンバーに名を連ねた。それほどまでに大岩監督からの信頼は厚い。

 186センチのサイズを生かした競り合いの強さは、ほかのCBにはない強みで、スピードも水準以上。ビルドアップも安定感が増しつつあり、左右の足から繰り出すフィードも正確だ。

 2年半の歩みは決して順調ではなく、代表とクラブでプレーがリンクしないこともあった。それでも指揮官からチャンスをもらい、自らの足で掴み取った。ここで期待に応えなければ男ではない。覚悟を持って木村はパリ五輪に挑む。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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