「最低のセレソン」「選手も平凡」「恥でしかない」はすべて嘘? ロナウジーニョが招いた騒動の真相が明らかに。「僕はただもっと皆に…」【現地発】

2024年06月22日 リカルド・セティオン

反響の大きさに一番驚いたのは当のロナウジーニョ

セレソンに対する批判的なSNS投稿で騒動を引き起こしたロナウジーニョ。ただ、実は本心ではなく……。(C)Getty Images

 ロナウジーニョが、現セレソンを見限った!
 
 そんなニュースが、おそらく日本にも届いたのではないだろうか。数日前、ロナウジーニョは自身のSNSにこう書き込んだ。
 
「ブラジルサッカーを愛する者にとっては悲しい時代だ。もう試合を観るエネルギーもない。今のセレソンはここ最近で最低のチームだ。まともな監督はいないし、選手も平凡だ」
 
 この投稿はロナウジーニョが、ブラジルでは大人気のポッドキャスト『カナル・カルトルコス』に出演し、ブラジル代表についてのかなり辛辣な意見を言葉にした後だっただけに、より信ぴょう性が増した。
 
「子供の頃から、プロになろうなんて思うずっと前から、僕は代表チームを見てきた。だけど、これほどひどい状況は初めてだ。何よりも大切な、セレソンのユニホームに対する愛も闘志も感じられない」
 
「繰り返す、今の状況は最低だ。恥でしかない。ここにセレソンを放棄することを宣言する。コパ・アメリカの試合は観ない」
 
 この発言にブラジルはひっくり返ったような大騒ぎになった。ロナウジーニョは選手時代から笑顔がトレードマークの人物だ。仲間や後輩たちを批判したことも一度もない。そんな人物が、これほど厳しい言葉を吐くとは――。ニュースは世界中に広まった。
 
 セレソンの選手たちも、「自分たちのヒーローの口からこんな言葉を聞くなんて……」とショックを隠せず、怯えた。
 【PHOTO】華やかで可憐なスタジアムの華!EUROで躍動する名手たちの妻、恋人、パートナーら"WAGs"を一挙紹介!
 FWのラフィーニャなどは「つい昨日だよ。ロナウジーニョからコパ・アメリカの観戦チケットを頼まれたってヴィニスウスが言ってたのに」と混乱している様子だった。
 
 しかし、この反響の大きさに一番驚いたのは、実は当のロナウジーニョだった。ロナウジーニョは慌てて新しい投稿をする。
 
「これまでの投稿は、よくSNS上で見かける発言を真似しただけ。僕自身は絶対的にその反対だ。今まで以上にセレソンを応援するよ。僕はただ、皆にもっと熱くなってほしかっただけだ。今のセレソンはそうした皆のサポートが必要なんだ。若い選手たちは才能がある。もっと応援してほしい。コパ・アメリカが始まる。今は心の底から叫ぶ時だ。さあ進め!」
 
 種明かしをすると、ロナウジーニョの最初の発言は、彼が以前から広告塔を務める『レクソナ』というデオドラントスプレーのタイアップCMの一部だった。
 
『レクソナ』は"Não te Abandona (決して君を見捨てない)"のスローガンが昔から有名なブランドだ。今回はTorcida Que Não Abandona(決して見捨てないサポーター)を合言葉に、コパ・アメリカの期間中、セレソンをサポートするつもりだった。その導入として、ロナウジーニョがSNSでよく見かける悲観的なコメントを再現して見せて、のちにそれを否定するというストーリーだったらしいが、ロナウジーニョの発言はあまりにも真実味がありすぎた。今のセレソンの状況では、誰も冗談とは思えなかったのだ。
 
 コパ・アメリカの試合に、この騒ぎが影響しないことを祈りたい。
  
取材・文●リカルド・セティオン
翻訳●利根川晶子
 
【著者プロフィール】
リカルド・セティオン(Ricardo SETYON)/1963年8月29日生まれ、ブラジル・サンパウロ出身。ジャーナリストとし中東戦争やユーゴスラビア紛争などを現地取材した後、社会学としてサッカーを研究。スポーツジャーナリストに転身する。8か国語を操る語学力を駆使し、世界中を飛び回って現場を取材。多数のメディアで活躍する。FIFAの広報担当なども務め、ジーコやカフー、ドゥンガなどとの親交も厚い。現在はスポーツ運営学、心理学の教授として大学で教鞭も執っている。

【記事】「僕が監督だったら絶対にほしい」長谷部誠が絶賛したベテラン戦士は?「身体も張れますし...」

【PHOTO】EURO2024を華やかに彩る各国の美女サポーターを特集!
 
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事