【現地記者の英国通信】「280億円」を懸けた昇格争い! 小規模クラブの躍進でチャンピオンシップが白熱

2016年04月23日 スティーブ・マッケンジー

自動昇格の2枠を争い、ミドルスブラ、バーンリー、ブライトンが三つ巴。

現在、チャンピオンシップで首位に立つミドルスブラは人口14万2000人の街のクラブだが、今シーズンは順調に勝点を重ね、2008-09シーズン以来のプレミア昇格にあと一歩と迫っている。 (C) Getty Images

 今、イングランド・サッカーで最も関心が高いのは、レスターとトッテナムのプレミアリーグ覇権争いの行方だろう。しかし、チャンピオンシップ(イングランド2部リーグ)の昇格争いも佳境を迎え、熱を帯びてきている。
 
 チャンピオンシップは上位3枠に来季のプレミアリーグへの昇格権が与えられ、1位と2位が自動昇格、残る1枠を3位から6位がプレーオフで争う。現在、最も過熱しているのは上位2枠を巡る戦いで、ミドルスブラ(1位:勝点86)、バーンリー(2位:勝点84)、ブライトン(3位:勝点84)が三つ巴の熾烈な争いを繰り広げているのだ。
 
 プレミアリーグに昇格すれば、彼らは最低でもおよそ2億ポンド(約280億円)もの莫大な放映権料の分配が保障され、例えわずか1シーズンで降格したとしても"パラシュート・ペイメント"と呼ばれる下部リーグ降格後の経営をサポートする救済金6400万ポンド(約89億6000万円)が降格から4年間、プレミアリーグから支払われる。
 
 巨額な放映権によってイングランドのサッカークラブの仕組みは確実に変わってきている。
 
 以前のイングランドは、主な収入源が試合収益ぐらいで、より多くの観客を集めることができる都市部のクラブにベスト・プレーヤーが集まる傾向にあった。ロンドンを始め、リバプール、マンチェスターのクラブが繁栄してきたのは、そうした背景が関係している。
 
 しかし、今はサウサンプトン、レスター、ボーンマスといったお世辞にも大都市とは言い難い街のクラブがプレミアリーグに挑戦している。そして、彼らは大都市クラブのような試合収入を期待できないぶん、放映権を頼りに強豪クラブとの戦いに挑んでいるのだ
 
 まだシーズンが終わったわけではないが、すでにプレミアリーグからの降格が決まったアストン・ビラ(20位)に加えて、サンダーランド(18位)とニューカッスル(19位)が2部落ちの憂き目にあった場合、3チームのスタジアム収容人数は合わせて約14万4000人。それだけのメジャークラブがチャンピオンシップに行くことになる。
 
 一方、現在チャンピオンシップ上位3クラブ(ミドルスブラ、バーンリー、ブライトン)のスタジアム収容人数は合計89000人。そんな小規模クラブがプレミアリーグへ昇格すれば大金を得るのだから、今以上に力をつけるだろう。
 
 放映権料を使いそれなりの補強が行なえ、さらに注目度も上がる昇格クラブが1シーズンで降格の憂き目に遭うことは考えずらい。むしろ苦戦するのはプレミアリーグからチャンピオンシップに落ち、戦力流出を余儀なくされる降格クラブだろう。
 
 もし、現状のまま3位ブライトン、4位ハル、5位ダービー、6位シェフィールドでレギュラーシーズンが終了すれば、プレミアリーグへのラスト1枠はこれまでに前例のないほどに小さな街のクラブで争うことになる。
 
 はたして、彼らがクラブ繁栄のチャンスを掴めるのか――。興味深く見守っていきたい。
 
文:スティーブ・マッケンジー
 
 
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