【浦和】等々力での大怪我から1年。石原直樹が因縁の相手との一戦に臨むまで

2016年04月18日 轡田哲朗

復活への過程はいよいよ最終段階に。

約1年前の等々力陸上競技場で右膝前十字靭帯を損傷するという悲劇に見舞われた石原。苦しいリハビリを乗り越え、ピッチに戻ってきた。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

 悪夢の瞬間から、1年が過ぎた。2015年4月12日、等々力陸上競技場での川崎フロンターレ戦、先制点を許し1点を追う60分過ぎ、浦和レッズのFW石原直樹は相手選手と接触し、右膝を押さえて動けなくなった。そして、右膝前十字靭帯損傷という診断を受け、手術とリハビリの生活が始まった。
 
「イメージではもうちょっと順調にくるかなと思ったんですけど、1年経って『こんな感じか』ってところですね。最近まで不安な気持ちもあって、キレがもう一歩、二歩という感じだった。頭と身体は共有できているかなという感じだったんですけど、それがまだ、一緒になる時とズレる時があるから、その差はなくしていきたい。まだ苦しいというか…、もどかしさがありますね」
 
 石原は、あれから1年が経った自分の身体について淡々と言葉を重ねた。
 
 昨季、石原は浦和にとって前線の目玉補強とも言える加入選手だった。サンフレッチェ広島で2年連続ふた桁ゴールという実績を残して浦和に来た。負傷した川崎戦までのゲームにコンスタントに出場していたことからもミハイロ・ペトロヴィッチ監督など首脳陣からの高評価は窺い知れた。そのタイミングでの重傷だった。
 
「なぜ自分が……」と、そんな思いに駆られる瞬間もあったのかと問いかけると、「何回かありましたよ」と正直な胸の内を明かしてくれた。それでも、「さらにレベルアップして戻るということを考えながらリハビリをやっていましたね」と言う。そんな石原の心の拠りどころは、「家族がいたことと、クラブ、チームメートがしっかりとサポートしてくれたこと」だったという。
 
 大原サッカー場(浦和の練習場)で、チームがゲーム形式のトレーニングを行なっているところを横目に見ながら、わずか5メートルほどの距離を1分近くかけて移動していたこと。猛暑の中、駐車場で顔を合わせた時に「手術したの、ここですよ」と、傷痕を見せてくれたこと。11月11日の天皇杯で復帰する際に、ペトロヴィッチ監督と抱き合って激励されていたこと。様々な場面を見てきたが、今その復活の過程は最終段階にある。
 

次ページこの1年間は「我慢の連続」だった。

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