【セリエA現地コラム】サポーターが暴徒化する混迷ラツィオ。シモーネ・インザーギ新監督もいわば「繋ぎ」で、来シーズンはあの鬼軍曹を招聘?

2016年04月14日 片野道郎

クラブとウルトラスの関係は、修復不可能なレベルにまで悪化。

デビュー戦を勝利で飾ったインザーギ。「このチームのクオリティーは高い。どこが相手でも勝つのは可能だ」と自信を覗かせた。(C)Getty Images

 ラツィオが揺れ続けている。
 
 4月3日のローマ・ダービーに1-4という惨敗を喫して、ステーファノ・ピオーリ監督を解任。プリマベーラ(U-19)を率いていたシモーネ・インザーギの内部昇格に踏み切った。
 
 しかし、この決定はあくまで今シーズン終了までの暫定となりそうな気配だ。来シーズンは、12日にミランを解任されたばかりのセルビア人監督シニシャ・ミハイロビッチの就任が濃厚という観測が強まっている。
 
 今シーズンのラツィオは、守備の要ステファン・デフライをはじめ、ドゥシャン・バスタ、シュテファン・ラドゥ、ルーカス・ビグリア、セルゲイ・ミリンコビッチ=サビッチなど、主力の多くに故障による中・長期の欠場が相次いだこともあり、3位という望外の成績を残した昨シーズンとは打って変わって、ヨーロッパリーグ(EL)出場権争いすらおぼつかないという不本意な結果が続いていた。
 
 元々クラウディオ・ロティート会長への対立姿勢を打ち出していたゴール裏のウルトラスは、ローマに敗戦後その抗議行動をますますエスカレートさせている。
 
 ダービーの当夜には、ローマ郊外フォルメッロのトレーニングセンターに400人以上が集まって、スタジアムから選手を乗せて戻ってきたチームバスや警備の警官隊に投石するなど、暴動まがいの騒動を起こして10数人の逮捕者を出した。さらに翌日以降も、チームがロティート会長の指令で今シーズン3度目の懲罰合宿を行なっていたウンブリア州ノルチャ(ローマから170キロあまりの距離)まで押し掛けて抗議行動を繰り返したのだ。
 
 クラブとの対立関係は修復不可能なレベルにまで悪化しており、そのせいでチームの周囲には剣呑な空気が漂い、不振に拍車をかける要因となっている。
 
 ちょうど40歳の誕生日を迎えた5日に、そのノルチャでトップチーム監督としての仕事をスタートさせたインザーギ新監督。初戦となった5日後のパレルモ戦は、ここ3か月近く勝ち星がなく、監督もシーズン7人目という極限的な混迷に陥っている相手にも助けられてアウェーながら3-0の快勝。シーズン目標の最低ラインである6位以内(EL予選出場権)への希望を残した。
 

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