【ビッグクラブの回顧録】“あの時”のユナイテッドを振り返る 最終回~2014-15シーズン ~

2016年04月11日 サッカーダイジェストWeb編集部

最適解が見つからず、魅力も欠いたサッカーで優勝は遠のき…。

開幕前のブラジルW杯でオランダを3位に導いたファン・ハールが監督となり、参謀には前シーズンに選手兼任監督として指揮を執ったギグスが就いた。 (C) Getty Images

 長期化が期待されたデイビッド・モイーズ政権が1シーズンともたずに崩壊し、再出発を余儀なくされた14-15シーズン。ユナイテッドにとっての改革元年に再建を託されたのは、オランダ人指揮官のルイス・ファン・ハールだった。
 
 開幕前のブラジル・ワールドカップで母国代表を3位に導いた名将は、チーム合流から程なくして、巨額の補強費を投じて戦力の入れ替えを実行していく。
 
 ルーク・ショー、マルコス・ロホ、ダレイ・ブリント、アンデル・エレーラ、アンヘル・ディ・マリアら一流選手を乱獲し、さらに移籍期限ぎりぎりでラダメル・ファルカオをモナコから引き抜いた。
 
 総額1億5364万ポンド(約261億1880万円)という超大型補強は、市場の話題を独占した。
 
 改革のために施したのは、戦力の増強だけではなかった。W杯で3バックを採用し、手応えを掴んでいたファン・ハールは、ユナイテッドにも3-5-2のシステムを持ち込んだ。
 
 この革新的といわれた3バックシステムは、しかしイングランドでは馴染みが薄く、なかなか機能せず。チームは連動性に欠け、開幕から3戦未勝利と結果が出なかったこともあり、早々に頓挫することとなる。
 
 あえなく従来の4バックに戻すと、今度は故障者に悩まされ、戦略家の指揮官は試行錯誤の日々が続いた。
 
 クラブ史に残る大補強も、ファルカオ、ディ・マリアの南米コンビがプレミアの水に馴染めず、巨費に見合うだけ効果はなく、低空飛行を続けた。
 
 そんな不安定なユナイテッドを支えたのは、移籍4年目のスペイン人GK、ダビド・デ・ヘアだった。夏にフリートランスファーで加入したビクトール・バルデスとのポジション争いを制し、自信をつけた守護神は神懸かったセーブを連発。チームの窮地を幾度なく救ってみせたのである。
 
 後半戦はデ・ヘアの活躍に加え、フィジカルを重視したスタイルに転換したことで、序盤戦はベンチウォーマーにすぎなかったマルアン・フェライニが復活。これにより、取りこぼしは減っていった。
 
 高質なプレーを複数ポジションで披露したウェイン・ルーニーの大車輪の活躍もあり、27節のサンダーランド戦から6連勝を記録し、チャンピオンズ・リーグ(CL)出場圏内の4位にまでチームは浮上した。
 
 しかし、ユナイテッドの戦いぶりは、5シーズンぶりに覇者となったチェルシーの、他の追随を許さない完璧なサッカーには遠く及ばなかった。
 
 とりわけ勝負強さという点では、就任2シーズン目のジョゼ・モウリーニョに勝利への強い意識を植え付けられたチェルシーに分があり、ユナイテッドは33節の直接対決を0-1で落としている。
 
 ユナイテッドは改革元年を4位で終了。国内カップ戦も失った。欧州の舞台に返り咲くという最低限のノルマをクリアし、翌シーズンへと望みは繋いだが、新たな補強を含めた人員の整理や戦術の最適解の選択など、ファン・ハールには山積みの課題が残された。
 
――◇――◇――
 
 そして現在進行中の15-16シーズン。ユナイテッドの苦悩の時は続いており、ファン・ハール体制はいつ崩壊してもおかしくない状態となっている。果たしてこの先、彼らにはどのような未来が待ち受けているのだろうか――。(了)
 

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