【今日の誕生日】4月7日/英雄になり損ねたカルチョの名FW――デルベッキオ(元イタリア代表&ローマetc.)

2016年04月07日 サッカーダイジェストWeb編集部

自ら点を取り、周囲を活かし、守備でも貢献できた万能型FW。

EURO2000決勝での先制ゴール後。フランスの強力な攻撃を封じて効率良くゴールを奪って逃げ切るという、ディノ・ゾフ監督のプラン通りの展開だった。93分までは……。 (C) Getty Images

◇マルコ・デルベッキオ:1973年4月7日生まれ イタリア・ミラノ出身
 
 今年はEUROイヤー。4年に一度の欧州の祭典は、過去最多の24か国によって争われるという、ますます規模の大きなイベントとなった。
 
 過去14回の大会では、精鋭たちによって多くの名勝負が演じられてきたが、とりわけ決勝戦の戦いはより強い印象を見る者に与え、その記憶は世界中の人々の脳裏に焼き付いている。
 
 数々の名場面が生まれた歴代の決勝戦のなかで、最も劇的な展開となったのは、2000年、オランダ・ロッテルダムで行なわれたフランスとイタリアの一戦だろう。世界王者の前者が後半終了間際に追いつき、延長戦で逆転して戴冠したドラマチックな戦いだ。
 
 この試合、イタリアの先制ゴールを挙げながら、後半アディショナルタイムの失点によってヒーローになり損ねたのが、FWのマルコ・デルベッキオである。
 
 中田英寿がローマに在籍した2000年から01年、デルベッキオは2トップの一角を占めるレギュラーであり、日本のファンにもお馴染みの存在だった。
 
 186センチの長身を活かし、高い得点力を誇る他、ポストプレーヤーとしても機能した彼は、しかしエゴイストではなく、自分が囮となって味方を活かすプレーもでき、また前線からの守備も怠らない。年々、プレーの幅を広げていった、どんな監督からも重宝されるFWだった。
 
 1991年にインテルでプロデビューし、ヴェネツィア、ウディネーゼで経験を積み、94年にインテルに戻ると、主力として33試合に出場。その翌シーズンからローマへ移り、ここでの10シーズンで彼はカルチョ屈指のFWへと成長していった。
 
 2000-01シーズンにスクデット獲得に大貢献。相棒ガブリエル・バティストゥータ、トップ下のフランチェスコ・トッティを活かすため、サイドに開いてスペースを作り、彼ら2人の分も守備に奔走するなど、ファビオ・カペッロ監督のチームになくてはならない存在だった。
 
 ローマ退団後は、ブレッシア、パルマ、アスコリでプレーし、最後はアマチュアリーグでもプレーしたデルベッキオ。引退後は、クリスティアン・ヴィエリとともにテレビ番組を持ってプロ顔負けのダンスを披露するなど、ここでも多才ぶりを示した。
 
 冒頭で触れたEURO2000に話を戻すと、デルベッキオはアズーリのユニホームを着て、98年から04年までに22試合出場4得点の記録を残したが、そのファーストゴールが、フランスとの決勝戦で挙げた先制点だった。
 
 4人のDFのあいだに入り込んで、ジャンルカ・ペッソットのクロスを左足のインサイドで押し込んだプレーは、FWとしての能力の高さを示すものであり、この55分の一撃は、最高の陣容を誇った当時のフランスに重くのしかかった。
 
 しかし前述の通り、イタリアは後半アディショナルタイム、シルバン・ウィルトールのゴールを許し、延長戦では防戦の末に103分、ダビド・トレゼゲのゴールデンゴールを浴び、失意のどん底へ……。栄光の瞬間から一転、悪夢の歴史を刻んでしまった。
 
 この結果によって、デルベッキオや彼のゴールの価値が失われたということはないが、もしあの93分の同点劇がなければ、彼が殊勲者となっていたのは間違いないだろう。なお彼は、02年日韓ワールドカップでもメンバー入りしたが、この時はピッチに立つことはなかった。
 
 ちなみに、これまでのEURO決勝戦で逆転劇が演じられたのは3回。ネーションズカップの名称でスタートした第1回、ユーゴスラビアが前半にミラン・ガリッチのゴールで先制したが、ソ連はスラバ・メトレベリが同点とし、延長戦ではビクトル・ポネデルニクが決勝点を挙げた。
 
 2回目は96年。伏兵チェコが勢いそのままにパトリック・ベルガーのPKでリードを奪うも、ドイツはオリバー・ビアホフが73分、そして延長戦突入後の95分と立て続けに決め、76年大会の雪辱を果たした。
 
 なお、68年大会の決勝戦は再試合に持ち込まれてイタリアが2-0の勝利を収めたが、最初の試合ではユーゴスラビアがドラガン・ジャイッチのゴールで先制し、イタリアは終盤にアンジェロ・ドメンギーニが決めて追いついている。
 
 00年大会の後、3大会ともに決勝戦では、王者のクリーンシートが続いているが、果たして今夏のフランスではどうか。そろそろ、衝撃的なドラマが恋しい(?)。
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