【ビッグクラブの回顧録】“あの時”のユナイテッドを振り返る vol.24~2013-14シーズン ~

2016年04月05日 サッカーダイジェストWeb編集部

低調なパフォーマンスに終始…モイーズ新政権は10か月で崩壊。

ファーガソンの後継者として期待されたモイーズは結果を出せず、クラブはファンから解任要求を突き付けられることに。 (C) Getty Images

 27年のアレックス・ファーガソン体制がついに終焉して新たなシーズンを迎えたユナイテッド。クラブ史上最高の指揮官の後任として迎え入れられたのは、ファーガソン自身が指名したデイビッド・モイーズだった。
 
 11シーズンにわたってエバートンを指揮してきたモイーズは早速、大金を拠りどころにした戦力補強に乗り出す。
 
 しかし、獲得候補に据えたチアゴ・アルカンタラはバイエルンにさらわれ、3600万ポンド(約61億2000万円)の高額オファーを提示したセスク・ファブレガスの獲得も失敗。結局、モイーズの秘蔵っ子であるマルアン・フェライニをエバートンから引き抜くだけに留まった。
 
 誤算続きで思うように進まなかった補強が祟り、ユナイテッドは開幕から低調なパフォーマンスに終始することとなる。
 
 その原因となったのは、工夫のない単調な攻撃にあった。
 
 モイーズが持ち込んだ、ロビン・ファン・ペルシ頼みのクロスボール主体の英国的なスタイルでは、優勝戦線を争うビッグクラブの守壁を壊せず、さらにロングボールを多用するなかで、香川真司のような技巧派たちの輝きも薄れていった。
 
 ユースから昇格し、荒削りながら躍動感のあるドリブルで違いを作り出していたアドナン・ヤヌザイの登場というサプライズはあったが、19歳の若武者に沈みかけのクラブを再生させる力はなく、頼みのフェライニも、11得点を決めた前シーズンとは程遠い出来だった。
 
 さらに、加齢による衰えが目立ったリオ・ファーディナンド、軽率なプレーでミスを連発したクリス・スモーリングの最終ラインが不安定さを露呈。チャンピオンズ・リーグではグループステージこそ無敗で勝ち抜くも、準々決勝のバイエルン戦でその弱点をさらけ出し、2戦合計2-4で敗退した。
 
 多くの問題を抱えたモイーズ政権は、3月16日のリバプール戦で0-3と惨敗し、3月25日のシティ戦でも完封負け。この宿敵相手のホーム2連敗が、政権崩壊の呼び水となった。
 
 そして4月20日、アウェーでの35節エバートン戦を0-2と落とすと、ユナイテッド関係者の信頼を失ったモイーズは解任を告げられる。慣れ親しんだスタジアムで古巣に引導を渡されるという、皮肉な結末だった……。
 
 残りの4試合でコーチ兼任だったライアン・ギグスが暫定監督として指揮するも、もはや手の施しようがなく、ユナイテッドは7位でフィニッシュ。25シーズンぶりに欧州カップ戦出場権を逃した。
 
 そして、この最悪のシーズンを最後に、ギグスは現役引退を表明した。
 
「ジャックナイフ」と呼ばれた鋭いドリブルを武器にしたスタイルから、パサーへとプレースタイルを変化させながら、24年もの間、ユナイテッド一筋で戦ってきた最古参は、最後に力強く語った。
 
「今日という日は、私にとって新しいスタートだ。このクラブが再びあるべき姿に戻ることを確信している」
 
 そんなレジェンドを、ファンは万感の拍手で送り出した。

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