フランスとオランダに連勝。電撃代表復帰の34歳クロースがドイツ代表にもたらした絶大な効果とは?【現地発コラム】

2024年04月02日 中野吉之伴

「世界最高峰の攻守を結びつける選手」

クロース(右端)の復帰は、ドイツに小さくない効果をもたらした。(C)Getty Images

「安堵している。この10日間はとてもよかった。チームのスピリットは11月のそれとまったく違う。全てがかみ合ったらサッカーでは多くのことが可能になる。6月もかみ合い続けることを祈っている」

 ドイツ代表のユリアン・ナーゲルスマン監督はフランスとオランダを相手にした2連勝をそう振り返っていた。心からの言葉だろう。不穏な空気やネガティブな記事が連日並んでいたのだから。

 昨年11月の代表シリーズは散々だった。ハンジ・フリック監督の跡を継いで代表監督となったナーゲルスマンは10月のアメリカ遠征で悪くはないパフォーマンスと結果でそれなりの評価を得ていたものの、11月のトルコ、オーストリアにふがいない試合で連敗を喫すると、世間からの風当たりは強まった。

 ワールドカップ2大会連続でグループリーグ敗退、2021年のEUROも決勝トーナメント1回戦で大会を去っている。なのに「チームのポテンシャルは高い」とか、「大会になればドイツとして目標はベスト4」とか、現実にそぐわない視点で議論されている有様だ。

 ナーゲルスマンは11月の失敗から代表監督としてのアプローチを再調整したのだろう。クラブの監督と違い、代表チームにはまず時間がない。ポテンシャルを引き上げたり、選手を順応させたりための取り組みをする時間はほぼない。

 所属チームでのコンディションとパフォーマンス、チームとしての戦い方の整理、そしてレギュラーではなくともチームの雰囲気を損なわない選手の組み合わせを探り出した。
【動画】クロースのパスから至宝ヴィルツが圧巻フィニッシュ!ドイツがフランス戦で決めた開始8秒弾
 その第一手がトニ・クロースを代表に呼び戻すことだった。21年のEURO後に代表を引退していたが、34歳になってもいまだにレアル・マドリーで主力として活躍するその才能を疑う者はだれもいない。

 ただ代表復帰はすなわち中心選手しての起用が約束されてなければならない。これまでのチームにあったヒエラルヒーを崩してでも復帰させるべきなのか。ナーゲルスマンは明確なプランで迎え入れる決意をした。

「世界最高峰の攻守を結びつける選手」と最大限の評価をするクロースの才能を遺憾なく発揮させ、チームに欠けていたゲーム構造と攻守のバランスを取り戻し、それぞれの選手が役割を受け入れてプレーできるように、選手それぞれと密なミーティングをして、新しい秩序をもたらすことに尽力した。

【画像】セルジオ越後、小野伸二、大久保嘉人、中村憲剛ら28名が厳選した「 J歴代ベスト11」を一挙公開!

次ページ「数か月前だったら、失点で打ちひしがれてしまったかもしれない」(クロース)

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事