「日本人の評価が上がっている」鮮烈な今季1号を蹴り込んだ菅原由勢が実感する“サムライの価値”。AZサポーターからの壮大なチャントに宿るステータス【現地発】

2024年03月03日 中田徹

「相手の股のコースが空くかなと思った。いい決断ができたかなと」

目が覚めるようなクリーンショットをねじ込む菅原。アウェーながらゴール裏にチャントが響き渡った。(C)Getty Images

 AZのサポーターが歌う菅原由勢のチャントはなかなかカッコいい。アメリカポップでもオランダ歌謡のリズムでもなく、灼熱の太陽に照らされたアンダルシアの乾いた土地を連想させる、そんな情熱的なチャントだ。
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 3月2日、スパルタ対AZ戦の25分。菅原のゴールで先制すると、アウェーゴール席に陣取るAZサポーターが熱狂的に菅原のチャントを歌い続けた。
 
「16番の選手(MFスベン・マイナンス)からボールが来る前に、目の前の選手(スパルタの左SBファン・デルクスト)が見えていた。ボールを止めて1対1を仕掛けてシュートまでいくか、それともワンタッチで撃つかなど、いろいろなオプションを持ちながら、相手選手を見て(シュートの種類を)決めようと思っていました。僕に来たのがすごくいいボールだったので、相手の選手が距離を詰めてなかった。シュートモーションをしたら相手の股のコースが空くかなと思った。いい決断ができたと思います」
 
 こうしてワンタッチシュートを選択した菅原は、右45度の角度から、ゴール左隅にクリーンシュートを蹴り込んだ。

「シーズン初ゴールでした。 いまいち今シーズンは数字を残し切れていないというのは自分自身感じていました。もっともっと数字にこだわりたいと思っていたんで、まず1点いい形で取れたのは良かったかなと思います。上がるタイミングも含めて良かったです」 
 
 後半開始まもない50分、先にヘディングしようとジャンプした菅原に対し、スパルタのFW斉藤光毅が背中から身体を当てて競ってきた。このとき、斉藤と菅原が接触して、菅原は膝と頭を痛めてしまった。結局、菅原は5分間だけプレーを続行し、55分にサム・スタムと交代してベンチに退いた。

「100パーセントの力を出すには難しい状況だった。一回膝(の手術)をやったというのもある。あまりリスクをかけたくなかったので(プレーを)やめました」

 一旦、ロッカールームに下がった菅原が、再び姿を見せてベンチに座ろうとすると、またもや菅原のチャントがアウェー応援席から起こった。その後、菅原はベンチの前で立ち上がり、拳を振り回しながらチームを鼓舞し、指示を出し続けた。その姿は、かつてのアヤックスのリーダー、ドゥシャン・タディッチ(現フェネルバフチェ)がアルフレッド・スフローダー監督(当時)より前に出てチームメイトにコーチングする姿を彷彿させた。

「別に(自分が)リーダーというか…。ただ試合に勝ちたいっていう思いが、そういうことをさせたと思う。僕がピッチにいようがいなかろうがチームのためにやれることはある。そこは考えながらやっていました」

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