【中村憲剛の欧州サッカー観戦記】バイエルン対ユーベの「戦術合戦」に驚嘆! ベスト8以降のCLはシメオネら各チームの「監督力」に注目だ!

2016年03月26日 中村憲剛

アッレグリの巧みな戦術が試合のクオリティーを引き上げた。

海外サッカーを長年に渡って見続けている中村憲剛が、ベスト8以降のCLを展望解説! (C) Reona TAKENAKA

 チャンピオンズ・リーグ(CL)の決勝トーナメント1回戦は、バイエルン対ユベントスの対決(3月16日)が思わずブログを書こうかと思ったくらい、ハイレベルな試合でした。その次元にまで引き上げたのはユーベのアッレグリ監督だったと思います。

CL|バイエルン 4-2 ユベントス|採点&寸評
 
 僕はユーベがディバラとマルキージオ、キエッリーニを怪我で欠く状況で、どうやって臨むかというのが一つのポイントだと思ってたんですが、彼らは敵陣と自陣で守備のやり方を変えていたんです。
 
 バイエルンが自陣でビルドアップを始めた時には、まずポグバとモラタが最終ラインにプレスに行って、相手のパス回しの基点となるシャビ・アロンソのところにはケディラとエルナネスのダブルボランチが交互にプレッシャーにいっていた。
 
 それはバイエルンに裏へロングボールを蹴られるボアテングが不在だったため、裏を狙ったパスがこないのをユーベがわかっていたからだと思うんです。だから、前から潰しにいってボランチの背後を空けても、マンツーマンで対応できるだろうと。実際、その通りの展開になっていましたよね。
 
 あとユベントスは自陣に入られたら、システムを可変させていた。ポグバが左サイドハーフ、A・サンドロが左WB、エブラが左のCBにポジションを移して、5-4の2ライン(DFとMF)を作って守備組織を構築し、縦パスを入れさせないようにしていた。そして縦パスを引っ掛けてカウンターを狙っていました。特に1点取ってからはその姿勢が顕著に出ていて、2点目は目論見通りだったと思います。
 
 バイエルンは3月6日のドルトムント戦(0-0)を含め、5バックの攻略に苦戦していた。それがアッレグリの頭の中に入っていたんだと思います。本当に凄い監督ですよね。
 
 前半を0−2で折り返したバイエルンは、60分にシャビ・アロンソを下げてコマンを投入し、サイドに人を増やしたのがカギだったかなと思います。
 
 ベルナト、コマンとクロスを上げる人数をどんどん増やした後半は、相手を完全に押し込んでいた。クアドラードにやられた2失点目のように中央で引っ掛けられてカウンターを受け、3失点目を喫したら終わりなのが分かっていて、サイドからの攻勢を選択したんだと思います。
 
 サイド深くからの攻撃を受け続けたユーベは、DFラインを自陣のペナルティーエリアに押し下げられた。そこからカウンターを出すには距離が長くてスタミナを削られました。そこに故障者の多さから状況を打破する効果的な交代カードもなくて、延長戦に入った段階で万事休すって感じでしたね。
 
 結果としてバイエルンが途中出場のコマンとチアゴの得点で勝利しましたが、この試合は戦術的にすごく魅力的でしたね。もし、自分が指導者や監督だったら、何回も見直したいプレーや局面ばかりで、決勝で見たかったと思えるようなカードでした。
 

次ページバルサにとってタチの悪い指揮官シメオネの監督力。

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