【バイタルエリアの仕事人】vol.37 乾貴士|「不思議と言うか、尋常じゃない」理想の選手像はスペイン時代に対戦したマエストロ、ドイツでの日本人対決は「めちゃくちゃ嫌でした」

2024年02月29日 中川翼(サッカーダイジェストWeb編集部)

「『抜けへんな』と感じさせられたのは、カゼミーロ」

昔から憧れている先輩や参考にしている選手を教えてくれた。写真:梅月智史(サッカーダイジェスト写真部)

 攻守の重要局面となる「バイタルエリア」で輝く選手たちのサッカー観に迫る連載インタビューシリーズ「バイタルエリアの仕事人」。第37回は、清水エスパルスのMF乾貴士だ。

 前編では、J1昇格を期す新シーズンへの想いやトップ下でのプレー、バイタルエリアを攻略するうえで意識していることを訊いた。後編となる本稿ではまず、理想の選手像について語ってもらった。

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 サイドをやっている時には、野洲高校の先輩でもある楠神順平選手に憧れて、ずっとサッカーをやってきました。

 その時々で参考にする選手は変わってくるんですけど、あの人だけはずっと変わらずにお手本にしていました。楠神選手は小学生の時に見たドリブルがかなり衝撃でしたね。

 僕はドリブルをしている時にフェイントをかけるのが苦手で、あまりできなかったんですけど、彼はどんなにスピードに乗っていてもフェイントをかけながら、重心を低くドリブルをしていました。僕の理想で言えば、そういうタイプのドリブラーなんですけど、自分ができないのも分かっていたので、憧れて見ていましたね。

 今は自分がトップ下でプレーするようになって、見る選手もこれまでとは少し違います。最近はアンドレス・イニエスタ選手のプレーを参考にしています。

 イニエスタがヴィッセル神戸にいた時には対戦していないんですけど、僕がスペインにいて、彼がバルセロナでプレーしていた時に対戦した経験があります。
 
 当時はリオネル・メッシ選手もバルセロナにいて、彼らは意味が分からないぐらいのレベルの高さでした。「何でこんなにボールを取られへんのやろな」とか「何でこんなに判断を変えられるんやろな」と驚きましたね。

 メッシは正直、上手すぎて別格でした。どっちに行くかも分からないですし、足も速くて身体も強い。一方のイニエスタは、身体能力で言えばそんなに高くないと思うんですよ。足もそんなに速くなかったですし、身体もめちゃくちゃ強いかと言ったらそんなこともない。でもあれだけ上手くて、ドリブルでもボールを奪われない。置きどころが良かったりとか、体幹がしっかりしているとか、いろんな要素はあるんだろうなと思いながらも、あの上手さは不思議と言うか、尋常じゃないなと思ってしまいますね。

 だからやっぱり今の自分にとっての究極は、イニエスタですよね。彼がトップ下でプレーしている時は前にも行けて、後ろでもボールを落ち着かせられて、決定的な仕事もできる。それが僕の一番の理想としている形ですね。

 逆に対峙して、一番「抜けへんな」と感じさせられたのは、カゼミーロ選手ですね。レアル・マドリーにいた時の彼は凄かった。身体が強くて、寄せに来るスピードも速いし、読みも抜群。あれだけ当時、マドリーが圧倒的な攻撃力を発揮していたのは、彼が中盤の真ん中にいたのがかなり大きかったんじゃないかなと思いますね。

 あとドイツ時代の話で言えば、僕が左サイドをやっていた当時、右サイドバックの日本人選手がブンデスリーガにすごく多かったんですよ。うっちー(内田篤人)、(酒井)高徳、(酒井)宏樹とか。日本人対決で彼らと対戦するのはめちゃくちゃ嫌でしたね。それぞれタイプは違うんですけど、みんな抜こうとしても抜けないような距離感で、嫌な間合いを保ってくる。飛び込んでもこないし、かなりしんどかった記憶がありますね。

【動画】独走ドリブル→右足一閃! J2最優秀ゴール賞に選ばれた乾貴士の痛快ミドル弾
 

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