【ビッグクラブの回顧録】“あの時”のユナイテッドを振り返る vol.20~2009-10シーズン ~

2016年03月22日 サッカーダイジェストWeb編集部

大黒柱に成長したルーニーの離脱が響き、リーグ4連覇を逃す。

C・ロナウドが抜けた最前線で、頼れるポイントゲッターとしての役割を完璧に演じたルーニー。チーム最多得点を記録した彼の離脱が、プレミア制覇を逸する最大の要因となった。 (C) Getty Images

 クラブ史上2度目のリーグ3連覇を成し遂げ、ついに通算優勝回数(18)でライバルのリバプールと肩を並べたユナイテッド。しかし迎えた新シーズンは、重要な役割を果たしてきたクリスチアーノ・ロナウドの電撃退団という大きな衝撃とともに幕を開けた。
 
 後にアレックス・ファーガソンが自伝本で「レアル・マドリーのようなメガクラブから8000万ポンド(約136億円)のオファーを受けて、誰が彼を引き留められるだろうか」と吐露したように、マドリーからの2度目の巨額オファーに対し、今度は前シーズンのような愛ある慰留も効果がなかった。
 
 C・ロナウドの売却を強いられたユナイテッドは、いかにして彼の穴を埋めるのかという難しいテーマを突きつけられる。そして、この難題を解決したのはウェイン・ルーニーだった。
 
 これまで、ウイングやセカンドトップなどで、チャンスメーカーとしての貢献が目立っていたルーニーをCFに固定。そのためにはフィニッシュの向上が欠かせなかったが、イングランド代表FWはこの要求に完璧に応えてみせた。
 
 得点パターンを増やしたルーニーは、ゴールゲッターとしての才能を開花させ、キャリアハイの26ゴールを叩き込み、C・ロナウド退団の影響をほとんど感じさせないほどの活躍を披露した。
 
 しかしこのシーズンは、C・ロナウドだけでなく、攻撃の中核を担っていたカルロス・テベスがライバルのマンチェスター・シティへ移籍して選手層が薄くなってしまっていたこともあり、ルーニーへの負担は増加していった。
 
 新戦力のアントニオ・バレンシア、マイケル・オーウェン、現有戦力のナニ、ディミタール・ベルバトフはC・ロナウド、テベスのように局面で違いを作り出せず、前年に台頭したフェデリコ・マケダもアピール不足が否めず。頼れるアタッカーは、ルーニーしかいなかったのだ。
 
 彼の存在の大きさを皮肉なかたちで思い知らされたのは、勝負どころの春先だった。
 
 3月30日にチャンピオンズ・リーグ(CL)のバイエルン戦でルーニーが右足首を負傷して戦線離脱すると、4月3日に行なわれたチェルシーとの天王山決戦に1-2で敗北、さらに翌節のブラックバーン戦もスコアレスドローに終わり、英国史上初のリーグ4連覇を逃したのだ。
 
 知将カルロ・アンチェロッティに率いられて4シーズンぶりの覇権奪還に成功したチェルシーとの勝点差はわずか1。ルーニーの欠場は、ユナイテッドにとって致命的なダメージとなった。
 
 一方、カップ戦では、決勝でアストン・ビラを2-1で破ってリーグカップを連覇。CLは準々決勝でバイエルンにアウェーゴールの差で敗退し、FAカップも3回戦でリーズに0-1で敗れたが、後者は控え組中心で臨んでいただけに、さほど失望を味わうことはなかった。
 
 

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