【ビッグクラブの回顧録】“あの時”のユナイテッドを振り返る vol.17~2006-07シーズン ~

2016年03月14日 サッカーダイジェストWeb編集部

結束力でチェルシーを退け、4シーズンぶりにプレミア制覇!

10月1日のニューカッスル戦でリーグ首位に立つと、それ以降、一度も順位を譲ることなく独走。文句なしの強さで、4年ぶりのリーグタイトルを奪還した。 (C) Getty Images

 アレックス・ファーガソンが就任20周年を迎えた2006-07シーズン。ユナイテッドは、90年代後半の黄金期を彷彿とさせる盤石の横綱サッカーを披露した。
 
 前年までのような目立った大型補強はなく、このシーズンの開幕前にユナイテッドが獲得したのは、ロイ・キーンの後釜として据えたイングランド代表MFのマイケル・キャリック(←トッテナム)のみだった。
 
 対照的に、3連覇を目指すライバルのチェルシーは大型補強を展開。アンドリー・シェフチェンコ、ミヒャエル・バラック、アシュリー・コールら大物スターとの交渉を次々に成功させて、世界トップクラスの豪華な陣容を揃えた。
 
 そうしたオフシーズンの動向もあり、前評判だけでいえば、チェルシーの優勝を予想する声が圧倒的に多かった。
 
 しかし、チェルシーはチェフをはじめ、怪我による主力の離脱が相次ぐ誤算もあって失速。バラックら新戦力も空振りに終わり、指揮官のジョゼ・モウリーニョとオーナーのロマン・アブラモビッチの不和も噂されるなど、王者は内部崩壊していった。
 
 そんなチェルシーを脇目に、ユナイテッドは開幕4連勝とロケットスタートを切り、7節に首位に立つとさらに加速していった。
 
 好調の立役者となったのはクリスチアーノ・ロナウドだ。他の追随を許さないテクニックと決定力でワールドクラスの仲間入りを果たした背番号7は、17ゴール14アシストを記録。PFA(選手協会)年間最優秀選手賞とFWA(サッカー記者協会)年間最優秀選手賞を同時受賞することとなる。
 
 しかし、ユナイテッドはC・ロナウドの個に依存していたわけではなく、縦横無尽の動きと巧みなフィニッシュワークで攻撃を活性化させたウェイン・ルーニーも、14ゴールを挙げて存在感を示した。
 
 さらに、この2人の若手タレントに触発されるかのように、ポール・スコールズ、ライアン・ギグスらベテラン陣も全盛期を思い起こさせるプレーでピッチを掌握。とりわけ、原因不明の視力障害から復帰したスコールズの、気の利いたポジショニングと職人芸の域に達するパスセンスは特筆に値した。
 
 守備でも、リオ・ファーディナンド、ネマニャ・ヴィディッチのCBコンビは強固な壁を築き、守護神のエドウィン・ファン・デルサルも最後の砦として抜群の安定感を誇った。
 
 こうして若手とベテランが見事に噛み合い、チーム一丸となった赤い悪魔は、安定した戦いぶりで7節以降、一度も首位の座を譲ることなく、2試合を残して4シーズンぶりのリーグ覇権奪還を成し遂げた。
 
 カップ戦ではタイトルは獲得できなかったものの、チャンピオンズ・リーグ(CL)では準決勝まで勝ち進み、FAカップも決勝に進出。若手の鍛錬の場としたリーグカップを含めて、カップ戦でも充実した内容を見せ、躍進を印象付けた。
 
 大補強が裏目に出て、団結力に欠けたチェルシーを尻目に、ファーガソンの下、結束したユナイテッドはライバルの「一強支配」に終止符を打った。この結束力が、翌シーズンにさらなる成功をもたらすこととなる――。
 
 

次ページ2006-07シーズン成績&主なトランスファー

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事