「最近は量より質」。代表6戦6発と驚異のハイペースでゴールを積み重ねる“左の点取り屋”中村敬斗の矜持【アジア杯】

2024年01月15日 元川悦子

「打てばいいというものではない」

左45度から右足一閃。見事なフィニッシュで勝ち越し弾を挙げた中村。写真:梅月智史(サッカーダイジェスト写真部/現地特派)

[アジア杯GS第1節]日本 4-2 ベトナム/1月14日/アルトゥマーマ・スタジアム

「先制点までは良かったが、ベトナムが個々の選手のフィジカル的な能力、技術的な能力が高いなかで、トルシエさんが戦術的に組織だった対応をしたことで難しい試合になった。カウンターやセットプレーでパワーをかけるなかで2失点してしまった。ワンチャンスにかけてくる相手という意味では、大いに反省しなければいけないと思います」

 森保一監督が反省点を口にしたように、1月14日に行なわれたアジアカップ初戦・ベトナム戦で、日本代表は4-2で最終的に勝利したものの、前半は大苦戦。一時はビハインドを背負うところまで追い込まれた。

 16分と33分にリスタートからゴールを奪われる。守護神・鈴木彩艶(シント=トロイデン)も「2失点は予想できなかった」と率直に認めていた。

 ただ、そこで絶好調の南野拓実(モナコ)中心に、焦らず前へ前へという姿勢を押し出したことで反撃の機運が高まったのは確かだ。

「やっぱりゴールに向かわないといけない」と左サイドで先発した中村敬斗(スタッド・ドゥ・ランス)も強気の姿勢を失わず、伊藤洋輝(シュツットガルト)との縦関係を活かして敵陣を攻略しようと試みた。
 
「右に伊東(純也=スタッド・ドゥ・ランス)選手が入るので、相手は右を警戒する。そこに人数をかける分、僕が空いてくるかなと。クロスに入るだけじゃなくて、自分が崩していこうと思っていた」と、中村は自身の課題だと指摘していた"左の崩し"から突破口を見出そうとしていたのだ。

 前半終了間際に南野が奪った同点弾も、中村&伊藤の関係性から生まれた。左に開いた南野がキープし、中村から伊藤へ展開。守田英正(スポルティング)、遠藤航(リバプール)とつながった瞬間、南野は巧みにゴール前へ侵入。縦パスをもらい、鋭い感覚で右足を振り抜き、日本を窮地から救う一撃をお見舞いした。

 そうなると、中村も負けてはいられない。ロスタイムが4分経過した時、遠藤からの縦のボールを受けた南野がドリブルで持ち込んだのを見逃さず、「敬斗ゾーン」とも言われるペナルティエリア左角で待機。ボールを受けると、2枚のDFの間を取って右足を一閃。芸術的なミドルをゴール右隅に蹴り込み、3-2と逆転することに成功したのだ。
【動画】6戦6発! 中村敬斗のゴラッソ
「拓実君の同点ゴールで流れがこっちに来ていたし、もらったら振ろうかなと思っていました。(シュートは)力を入れ過ぎないで重心を乗せて、身体に染みついているものを出しました。練習はしてきたけど、打てばいいというものではないので、最近は量より質。頭の中で軌道を描くのが本当に大事なんです」

 それが代表6戦6発男の真骨頂なのだろう。"左の点取り屋"は年代別代表時代に長くストライカーをやっていた経験が大きいのか、フィニッシュの時にはゴールの枠が大きく見える感覚があるのかもしれない。

【PHOTO】日本代表のベトナム戦出場16選手&監督の採点・寸評。4発勝利も6人に5点台の厳しい評価。MOMは2G1Aの8番

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