「エースとして君臨」「Sに近いA」久保建英のシーズン前半をソシエダ番記者はどう評価した?「クラックのみが醸し出す凄みすら感じさせる」【現地発】

2024年01月02日 ミケル・レカルデ

戦術面でもタケは進化を遂げた

ここまで6ゴールを奪っている久保。(C)Getty Images

「今の彼は私より優れている」

 今シーズン序盤、タケ・クボ(久保建英)に対する賞賛の声が絶えない中、ロベルト・ロペス・ウファルテが最大限の賛辞を贈った。レアル・ソシエダ史上最高のウイングの呼び声高いレジェンドの言葉はそれだけ重みがあった。

 ホキン・アペリベイ会長は、「評価はシーズンが終わったときにするものだ」と繰り返し主張する。確かに、シーズン終了時のほうがより信頼性があり公平でもあるが、そうした一般論を覆すほど、タケの2023年のパフォーマンスは見事というほかなかった。

 最優良の「S」に近い「A」が妥当な評価だろう。ドノスティアでのわずか1シーズン半で、日本人アタッカーはその懐疑論を完全に払拭しただけでなく、エースとして君臨するまでに成長を遂げた。

 この変貌ぶりに対し、マルティン・スビメンディ、ミケル・メリーノ、ブライス・メンデスといった偉大な選手たちに囲まれてプレーしているお陰という声があるのは事実だ。しかしタケはそのタレント軍団の中で、予測不可能で、異質で、そして時には制御不能な要素になっている。どんなチームであれ、魔法をかけられる選手は必要であり、その意味でもタケがすでにラ・リーグ最高の選手のひとりであるのに議論の余地はない。

【動画】久保が激昂したラフプレー&肋骨パンチ
 戦術面でもタケは進化を遂げた。昨年の今頃は、イマノル・アルグアシル監督が考案した4-4-2の中盤ダイヤモンドでトップ下を務めていたダビド・シルバの後継者になる運命にあると思われていた。しかしチャンピオンズリーグ出場権の立役者になる大車輪の活躍を見せた昨シーズン終盤、相手守備陣にカオスを巻き起こしたポジションは右サイドだった。

 その圧倒的な局面打開力をフルに活用し、対峙するマーカーとの1対1の勝負を仕掛ける機会を増やそうと、アルグアシル監督は、ボールを託した後、周りの選手のサポートの動きを自重させる戦術的なスキームを構築したほどだ。

 さらに同じく突破力に長けたアンデル・バレネチェアが左ウイングの定位置を確保した今シーズンはマークが分散したことでドリブルの威力がアップ。援軍と言えば、アマリ・トラオレの加入もそうで、時には無秩序でもある一瞬たりとも足を止めない強靭なフィジカルを活かしたオーバーラップで、相手守備陣を混乱させ、タケに多くの解決策を提供している。
 

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