【岩本輝雄】伊藤涼太郎はアピールに失敗? 悲観するような出来ではない。“らしさ”は見せたし、これからが楽しみな選手だよ

2024年01月01日 岩本輝雄

次のワールドカップまで、まだ時間は十分にある

タイ戦で代表デビューを飾った伊藤。目に見える結果は残せなかったけど、いくつかの見せ場を作ったし、まずまずの出来だった。(C)SOCCER DIGEST

 明けましておめでとうございます! 今年もたくさんスタジアムに足を運んで、サッカー観戦するつもりです。というわけで、元日も国立に行ってきました。

 アジアカップ前最後のテストマッチ。日本はタイと対戦して、5-0の完勝。これで国際Aマッチ9連勝。まだまだ連勝街道は続きそうだね。

 前半は0-0。序盤にちょっと危ない場面を作られたけど、その後は日本のペース。ただ、タイの粘り強い守備を前に、なかなかゴールをこじ開けられなかった。

 後半は堂安や中村、南野が入って、グッと勢いが出た。彼らは森保ジャパンのレギュラー格だし、実力通りのパフォーマンスで"違い"を見せた。ゴールにはならなかったけど、南野の決定機をお膳立てした堂安の鋭い縦パスは見事だった。かつての中田ヒデを彷彿させるワンプレーだったね。

 引いた相手をどう崩すか。アジアカップでも想定されるシチュエーションで、しっかりとゴールを奪ってみせた。本番に向けて弾みをつけられたんじゃないかな。
【動画】24年代表初ゴールは田中碧!
 後半だけで、一挙に5点。それだけに、ノーゴールで終わった前半の戦いぶりには、もしかしたら物足りなさがあったかもしれない。トップ下で先発した伊藤はこれがA代表デビュー戦で注目されていたと思うけど、目に見える結果を残せず、前半のみで退いた。

 本人は悔しかっただろうね。アピールできなかったという声もあるけど、でも、そこまで悲観することもない。たしかにゴールはなかったけど、"あと一歩"というチャンスは少なくなかった。

 前を向いた瞬間にシュート。思い切りが良かったし、ボールをもらうポジショニング、敵をかわす一瞬のスピードと、要所で「おっ!」というプレーはあった。"らしさ"は見せられたと思う。

 トップ下は久保や南野、鎌田ら強力なライバルがいる。ポジションを奪うのは簡単ではないけど、可能性がないわけではない。

 実際、アジアカップのメンバーからは漏れた。でも、次のワールドカップまで、まだ時間は十分にある。ベルギーでさらに力をつけて、成長してほしい。今回のタイ戦の経験も、次へのステップアップの糧になるはず。楽しみな1人だし、そういう選手がもっと増えてくれば、チームの底上げにもつながる。今後も注目していきたいね。

【著者プロフィール】
岩本輝雄(いわもと・てるお)/1972年5月2日、51歳。神奈川県横浜市出身。現役時代はフジタ/平塚、京都、川崎、V川崎、仙台、名古屋でプレー。仙台時代に決めた"40メートルFK弾"は今も語り草に。元日本代表10番。引退後は解説者や指導者として活躍。「フットボールトラベラー」の肩書で、欧州CLから地元の高校サッカーまで、ジャンル・カテゴリーを問わずフットボールを研究する日々を過ごす。

【PHOTO】日本代表のタイ戦出場17選手&監督の採点・寸評。5発快勝も7点台は2人のみ。MOMは先制ゴールのMF
 

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