鮮烈ゴールで勢いをもたらすも…世界を体感した“新中軸”がリスタートを切る日大藤沢の牽引車となる!【選手権】

2024年01月01日 森田将義

「僕たちが中心となって、来年のチームを作りたい」

冷静なフィニッシュで日大藤沢の先制点を決めた布施。PK戦による初戦敗退の悔しさと経験を来季に生かすと力を込めた。写真:滝川敏之

[高校選手権2回戦]近江(滋賀) 1(4PK3)1 日大藤沢(神奈川)/12月31日/等々力

 試合の口火を切る技ありのボレーシュートを叩き込んだものの、後半に入ってから同点に追いつかれてPK戦負け。11月に行なわれたU-17ワールドカップを戦う日本代表メンバーに選ばれ、今大会の注目選手のひとりだった日大藤沢のMF布施克真(2年)は試合後、悔しさを口にした。
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「ワールドカップはフィールドで自分だけ出場機会がなく、ものすごく悔しい想いをした。ただ、元々自分は入ると思っていなかったので、入れてもらって経験できたものはすごく大きい。だから、日大藤沢にできる限り還元したかった。口で言っても伝わりづらいので、プレーとオフザピッチでみんなに伝えられるよう頑張ってきた。自分がもっと伝えることができれば勝てたのかな、という悔しさはあります」

 一昨年に早生まれとして挑んだ国体で神奈川県の日本一に貢献したことが、世代別代表のスタッフの目に留まり、夏に二度、U-17日本代表入り。6月のU-17アジアカップは選外だったが、U-17ワールドカップには滑り込みでメンバー入りを果たした。ただ、実力者が揃う日大藤沢では不動の座を掴めているとは言い難い。夏のインターハイ本大会も初戦こそスタメンだったが、2回戦以降は後半からの出場が続いた。

 今大会、与えられたポジションは主戦場とするボランチとサイドバックではなく、右サイドハーフだ。初戦で対戦する近江は3バックの左に入るDF金山耀太(3年)の攻撃力が持ち味で、いかに彼を抑えられるかがポイント。大会前に行なったプリンスリーグ関東プレーオフなどで、右サイドハーフとして起用されたところ、布施の持ち味である守備強度を上手く発揮できたという。

 良いアピールができたものの、大会直前に行なってきた近江を想定したトレーニングでは独特のビルドアップに慣れず、簡単に前進させていたという。主力組から外されると危機感を抱いていたが、一昨日の夜に主将のMF佐藤春斗(3年)を中心に選手ミーティングを実施。先輩たちからボールへのアプローチ方法、縦と中の切り方を細かく教わり、守備の感覚を掴んだ。この日の試合でも金山にボールを持たれる場面はあったが、決定的な仕事をさせず、確かな手応えを得た。

 貢献は守備だけに留まらない。前半6分に奪った先制点は試合の流れを引き寄せる意味でも大きかった。左サイドを抜け出したMF諸墨清平(3年)のクロスにファーサイドから、ゴール前に侵入。目の前でワンバウンドした難しいボールだったが、ダイレクトボレーでゴール左隅に叩き込んだ。

「特に何も考えずただ合わせただけ。諸墨さんが自分を見てくれて、完璧なクロスを上げてくれた。あそこまで良いコースに行くとは思っていなかったのですが、決めることができて良かったです」
 
 結果的にはPK戦で敗れたため悔しさは残るが、夏からの成長も感じる試合になったのは間違いない。「インターハイは一つひとつのプレーが雑になり、そこから気持ちの部分でバッドに入っていた」と振り返った布施は、「自分のゴールでチームも個人的にも波に乗れた。チームの雰囲気を持ち上げることができたのは、成長かなと思います」と続けた。

 下級生から試合経験を積んできた選手が多かった今年の代とは違い、レギュラー争いに絡んだ2年生は布施のみだ。新チームでは二度の全国大会、そして世界を間近で感じた布施が、中心選手として引っ張らなければいけない。布施にはすでにその覚悟が備わっている。

「経験が僕たち今の2年生にはまったく足りていないと思う。自分が経験できたことを最大限、2年生1年生に還元したい。僕たちが中心となって、来年のチームを作りたい。この舞台に戻って借りを返したい」

 意気込み通りに来年度は主役として、選手権での勝利を引き寄せるつもりだ。

取材・文●森田将義

【厳選ショット】先制を許すも後半に追いついた近江が、PK戦で日大藤沢を退け熱戦を制す!|選手権2回戦 日大藤沢1(3PK4)1近江


 

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