【なでしこ】「新しい女子サッカーを築いていくために」――。意地のゴールに詰まった岩渕真奈の想い

2016年03月08日 小田智史(サッカーダイジェスト)

「過去は変えられないし、前を向いて未来を作っていかないといけない」

ベトナム戦前に五輪出場の夢は途絶えてしまったが、「新たなスタート」と気持ちを切り替えて臨み、チャンスメーカーとして、フィニッシャーとして攻撃を牽引した。 写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 ベトナム戦のおよそ1時間前、中国が韓国を1-0で下し、日本の五輪出場の可能性は消滅してしまった。しかし、今大会初のスタメン起用となった岩渕真奈は、中国戦の結果を知らされるなかでも決して気持ちを切らさず、「新たなスタート」だと思って試合に臨んだという。

【女子リオ五輪予選 PHOTOハイライト】ベトナム 1-6 日本

 そういった想いは、この日のプレーにも滲み出ていた。立ち上がりから積極的にボールを引き出し、大野忍や髙瀬愛実と連係プレーを見せながら、自らもドリブル突破を仕掛けてゴールを狙っていく。12分、ペナルティエリア内でスルーパスを受け、右足を振り抜いたシュートは惜しくもポストを直撃。20分にも大野の落としに迷わずミドルシュートを放ち、チームを盛り上げる。そして、0-0で迎えた39分、ついに岩渕が均衡を破る。
 
 左サイドを駆け上がった中島依美のクロスに、ドンピシャのタイミングで走り込み、鮮やかに先制弾を叩き込んだ。「中島選手が良いボールを上げてくれて、合わせるだけだった」。全員で戦う――という想いの強さからか、岩渕は自身のゴールを語るよりも、最高のアシストを出してくれたチームメイトを称えた。
 
「(五輪に出られず)寂しい気持ち、残念な気持ちはありました。でも、過去は変えられないし、前を向いて未来を作っていかないといけない。どういう状況でもやるしかなかったので、応援に来てくださる人たちの前で恥じないプレーをしたいなと。これからの女子サッカーを大切にするという意味でも、本当に大切な試合になったと思います」
 
 もっとも、岩渕本人は先述したポスト直撃弾や、53分に再び中島のクロスに合わせて放ったジャンピングヘッドを外すなど、さらなる得点チャンスを逃し、「1点取って、『良かった』のひと言では済ませられない」と悔しさを滲ませた。
 
 しかし、リオ五輪出場が叶わなかったショックから一歩踏み出すために、今後のなでしこジャパンを担っていくであろう、担わなければならない彼女がゴールを決めたことは、1ゴール以上の価値があったように思う。
 

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