「あの悔しさは一生消えない」五輪&W杯落選。菅原由勢の強靭なリバウンドメンタリティ「2年は長かったけど、すごく大切な時期だった」

2023年12月19日 元川悦子

若いうちから「目立ちたい」「成功したい」

久保(左)の存在で自分たちの世代の注目度は急上昇。菅原(右)は「自分の名を売るチャンス」と前向きに捉えていた。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 2023年の日本代表の7試合に出場し、右SBのファーストチョイスの地位を勝ち得た菅原由勢(AZ)。年代別代表時代から長く共闘してきた久保建英(レアル・ソシエダ)と、ようやく同じ舞台に立ったことになる。

 思い起こすこと8年半前の2015年4月。菅原らU-15日本代表はインドネシア遠征に赴いた。バルセロナ退団報道の渦中にいた久保がメンバー入りし、注目度が一気にアップ。日本サッカー協会が報道規制に乗り出すほどの事態に発展した。

 瀬古歩夢(グラスホッパー)や谷晃生(デンレル)、宮代大聖(川崎)ら2000年生まれの面々とともに名を連ねた菅原は、最初から久保への注目度の高さを感じ取っていた。それは2016年U-16アジア選手権、17年Uー17ワールドカップ、18年U-19アジア選手権と年齢が上がっても続いた。その事実は菅原にとって大きな刺激になったという。

「建英みたいな選手が自分たちの世代に入ってきて、『悔しい』とか『自分もああなりたい』とみんなが感じたと思う。悔しいと思わなければサッカー選手として成り立たないと僕は思うんです。

 正直、建英が僕らの世代の注目度を引き上げてくれたのは間違いない。日本国内で遠征した時に見に来る人の数だったり、カメラの台数だったり、取材する人の数もレベルが違ったので。僕はそこで『こういう時こそ、自分の名を売るチャンスだ』と前向きに捉えていましたね。

 自分が良いプレーをすれば、いろんな人が目を付けてくれる。何とかチャンスを上手く自分のモノにできないかと考えて取り組んでいました。ゴリさん(森山佳郎監督)も煽っていましたしね」と菅原は笑顔をのぞかせる。

「久保と同世代」というアドバンテージを活かした彼らは早いうちから世界に注目され、19歳で菅原と中村敬斗(スタッド・ドゥ・ランス)が欧州へ。鈴木冬一(ローザンヌ)が20歳、瀬古が21歳、小林友希(セルティック)と上月壮一郎(シャルケ)も22歳で海を渡っている。
 
 森山監督も「00世代の子たちは個性の強い選手の集団。自己主張が強かった」と語っていたことがあるが、それくらい鼻っ柱が強くないと、世界では戦い抜いていけないのだろう。

 特に菅原はすぐさま異国でチャンスを掴み、ハイレベルな実績を積み重ね、ここへきて一気に突き抜けようとしているのだ。それも若いうちからの「目立ちたい」「成功したい」という野心のなせる業だ。

 彼のアドバンテージは、高度なコミュニケーション力と表現力、物怖じしないメンタリティ、そしてサッカーを多角的に捉えられる賢さだろう。16年U-16アジア選手権に出ていた頃から、その一端が感じられた。

 当時の菅原は"チームのスポークスマン"として奮闘していた。久保への取材規制が凄まじく、森山監督でさえも「もっと他の選手を取り上げてください」とメディアに向かってアピールしていたが、率先して出てきたのが菅原だったのだ。

 大人と向き合っても物怖じせず受け答えし、しっかりとサッカーを語れるところは、若かりし日の内田篤人に通じるところがあった。本人にも「ポスト内田」「内田の後継者」と伝えたことがあるが、彼はどんな思いで偉大な先輩を追いかけてきたのだろうか。

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